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元村有希子さんが「科学を語る」

開催日:4月8日(火)16:30~18:30 イベントのカテゴリー:タイアップイベント

 毎日新聞社は8日、東京都千代田区の東京本社1階にある「MOTTAINAI STATION」に「毎日メディアカフェ」を開設した。初日は30人が集まり、TBSの「Nスタ」にコメンテーターとして出演中の元村有希子・デジタル報道センター編集委員が「科学を語る」と題して報告した。


 同カフェは毎週火曜と木曜に開かれ、記者と読者、市民の交流の場を目指す。担当記者が旬の話題について語る報告会や文化人の講演会、企業やNPOのイベントを開く。毎日新聞や同社の出版物を閲覧できる。  8日の開所式では、武田芳明・東京本社代表が「毎日新聞は開かれた新聞を指向している。毎日メディアカフェはその思いを具体化したもの。この場が、市民、読者、各社の役立つ場になってほしいと念願している」とあいさつ。また、開所式に出席したカシオ計算機の木村則昭CSR推進室室長は「期待するのは全国紙なので発信力。一つ一つの企業活動が小さくとも、こういった場でできれば、大きなムーブメントができるのではないか」と話した。


■元村有希子・デジタル報道センター編集委員の講演


 4月1日に10人で発足したデジタル報道センターの編集委員をしています。新聞紙には動画は載せられませんし、ページの関係でたっぷりの分量の解説記事も載せられない。カラーで見せたい風景写真などもモノクロで見せないといけないことがありますが、デジタルならば解決できるはずです。  私が記者になったのは平成元年。高校では理系でしたが、大学でまた理科や数学をやるのはいやだなあと文転し、大学ではカウンセラーを目指しました。でも当時、カウンセラーは就職先が限られていて、人の話を聞いて記事にする新聞記者を選びました。  2001年から13年間、科学環境部に在籍しました。理科が嫌いで文系になったのに、また理科をやるのかと最初は思いましたが、分からないことは分からないと言っていい、ということに気付きました。科学者って分からないことを聞かれるのが好き。質問の仕方をほめてくれる人もいるし、内容が分かってくると自分が楽しい。次から次へ好奇心が湧き、読者の反響もまたうれしくて、どんどん科学が好きになりました。やがて、科学そのものではなく、科学者の生き方や、科学が社会にどんな影響を及ぼすか、が好きだと分かってきました。


 科学環境部時代にはいろいろな取材をさせてもらいました。小柴さんと田中さんがノーベル賞を受賞した2002年にはストックホルムに行きました。王様主催のディナーは記者もドレス。飲み放題のシャンパンはドンぺリでした。食事代として2万円を払っていますが。  2005年には、野口聡一宇宙飛行士のスペースシャトル搭乗に合わせてアメリカへ行きました。直前のフライトでは7人が事故で亡くなっていて、その再開ミッションでした。7月上旬に行ったのですが、機器の不具合が分かり、点検や原因究明で打ち上げが3週間も遅れました。シャトルはすでに引退していますから、私は数少ないシャトル打ち上げ経験者の一人です。  いま、国際宇宙ステーションに滞在中の若田光一飛行士は5月中旬、ソユーズでカザフスタンに降りて来る予定です。NASAが仕切る取材とは違い、ロシアでは宇宙飛行士のそばまで行って話ができる。また、日本や米国は天候を理由に打ち上げを延期することがあるんですが、ロシアではほとんど延期しません。ロケット自体が頑丈だし、打ち上げ地のバイコヌールは雨雲がそんなに発生しないこともあります。  昨秋はイスラエルに科学技術の現場を見に行きました。お気づきかもしれませんが、ノーベル賞受賞者のかなりの割合をユダヤ人が占めています。「科学者には国境がないが、祖国がある」といわれていますが、そのことを強く感じました。ヨルダンとの国境にある死海は10年に1メートル以上、水位が低下しています。原因はヨルダン川上流の人口増と温暖化といわれ、かつてホテルの前にあった波打ち際が、今では車で移動しなければいけないほど後退していました。今、死海と紅海を結んで水位低下を防ごうという計画がありますが、塩分30%の死海に、濃度3%の紅海の水が入ってきたら、生態系が崩れてしまうと反対する科学者もいます。


 3年前の「3・11」は朝刊デスクでした。最初は地震と津波、やがて原発事故に振り回されることになりました。地震の直後は「原発は大丈夫」ということでしたが、全電源喪失し、原子炉を冷やせなくなってしまった。12日午後に1号機が水素爆発した時、建屋から煙が上がるのを見て、私たちは「これがベント(炉内の圧力を抜く作業)」と思いました。が、実は爆発だったんです。  東電をはじめ多くの人は、原発事故が現実に起きるとは思っていなかったのではないでしょうか。我々もどこかで「起きないだろう」と思っていました。事故が実際に起き、猛烈に反省しました。第5福竜丸がビキニ水爆実験で被爆した60年前も、当時の毎日新聞は事故が起きるまで、「原子力で走る夢の高速列車」なんて記事を書いています。失敗は繰り返すのです。  新聞報道では専門家の取材は絶対必要です。原発事故の時、私たちはその専門家が原発に懐疑的なのか寛容なのか、立場を踏まえて取材し、両方の言い分を同じ程度に載せました。一方で、読者に答えを提供しない伝え方に意味があるのか、とも悩んでいました。3年経った今も、伝えるべきことを伝えたかな、と自問自答しています。


 いま話題のSTAP細胞ですが、記者として興味があるのは、「STAP細胞があるか、ないのか」。大きな可能性を秘めた発見が、論文の作法を守らなかったばかりにつぶされてしまうのは残念です。小保方さんのように「コピペのどこがいけないんですか」という科学者を見ると、こうしたケースは氷山の一角ではないか、と思うのが記者の性分。かつて「ヒトクローン胚ES細胞作製」を捏造した韓国の大学教授がいました。iPS細胞から心筋を作って患者に移植したと発表した森口さんは、山中伸弥教授に対抗意識を感じていたようです。研究者には牧歌的なイメージがありますが、現実は違う。大学教授ポストなんて狭き門で、不正が起こりやすい素地はあるんです。


 「どうして見破れなかったのか」と聞かれますが、有名雑誌に投稿された論文の審査は、性善説に立ちます。だから、意図的にだまそうと書かれた論文のウソを見抜くのは難しい。我々は、その研究が本当かどうか検証できないので、有名な雑誌に載ることを一つの判断基準にしてきましたが、今回のことは教訓を残しました。論文を読んだ専門家がみんな、「内容がすごい」「共著者もすごい」と絶賛していたことも補強材料になりました。


 日本の研究者の多くは今、任期2~3年で雇われ、短期間に成果を出すことを求められます。同じ競争環境がある米国では、研究費が民間を含めて潤沢で、少ないパイを奪い合う日本とは事情が違います。物理学者ワインバーグは1972年の論文で「トランスサイエンス」という考え方を提唱し、「科学技術の発展が生んだ問題は、もはや科学者だけで解決できない。解決には研究者のスポンサーである国民が関与すべきだ」と指摘しました。私たちメディアは、世界で何が起きているかを知らせ、議論を喚起する役割を持っていると思います。失敗もありますが、試行錯誤を続けていきます。


■質疑応答 この後、元村記者と、斗ヶ沢秀俊・水と緑の地球環境本部長兼編集編成局編集委員が、参加者と質疑・意見交換をした。


質問者  研究者や学者のなかにも時の政府に偏った発言をしたり、御用学者というような人の発言をメディアは取り上げている。そのなかで賛成する人がいる、反対する人がいると公平に出すようにしていると言っていたが、30年前に山口県豊北町で原発の反対運動があった。その時は漁民が先頭に立って運動し、未だに県内には原発がない。闘争慣れした人は後ろにいて、目の前に海があり、そこで生活している漁民が運動した。その流れで学校のPTAとして合流し、デモなどをした。その時、科学的な視点による原発の怖さや原発を建設したらどうなるのか。この海はどうなるのか。それらを言ってくれたのが高木仁三郎さんだった。そういった人たちは、時の政府やいろいろなメディアからスポイルされたと聞いた。だから、公平な目線で報道していたらと思う。


斗ヶ沢記者  僕は高木氏の取材を一番し、紙面にした記者だと思っている。毎日新聞が原発反対運動について報道してこなかったのかというと、全然そうではないんですね。推進側の記事はほとんど書いていないに近い。客観的なものはたくさん書いていますが、主観を込めたものとすればほとんどない。だが、正直なところ、こういった規模の原発事故が発生するとは思わなかった。会社としてもそういった認識がなかった。限界があったし、僕らは何をやってきたのだろうという反省もある。しかし、決して政府の政策を推進する側で報道したことはまったくない。それをご理解いただけるとありがたい。


元村記者  私は豊北町に毎年家族で遊びに行っていた。そのときに横断幕があったのを子供心に覚えています。


斗ヶ沢記者  しかし、事故を防げなかったという点ではメディアの責任は大きかった。


元村記者  科学記者は何をやっていたのかと言われると。


質問者  STAP細胞の有無について、ないと考えていいと思う。テレビをつけるとコメンテーターが「STAP細胞があるかないかですよ」と言っていたりする。マスコミが議題設定を間違えると本質が見えにくくなる。いかに設定を行うのか、ミスリードしないかについてはどう考えているのか。STAP細胞なら、毎日新聞はどのように設定しているのか。


元村記者  できごとを取材する前、みんなでミーティングをする。議題設定をこうしようとは全くしない。担当記者が紙面計画を出す。それに過不足ないのかという点をデスクや同僚が見る。今回のSTAP細胞の最初の報道について言うと、新しい現象なのでそこを分かってもらえるようきちんと書こうと思った。割烹着についてなど人柄を紹介するような記事は社会面の軟派にというように面を分けて書くことで、硬軟取り混ぜた報道をしようと思った。ノーベル賞でも全く同じようなことをやる。1面に業績、2、3面に社会への影響、軟派に生い立ちや喜びの表情。毎日新聞には紙面審査委員会があり、最初の1週間の熱狂ぶりを振り返り、なぜ小保方さんをもっと「リケジョ」として書かないのかという注文が出ました。私たちの考え方は一人前の研究者をつかまえてリケジョはないだろうと。そもそも女子中学生や大学生について言う言葉。リケジョやエプロンについて物足りなかったと書かれたので、ちょっと腹が立ちました。そういったジェンダーからは距離を起きたいなというのが私の中にはあった。担当デスクも担当記者もたまたま女性だったが、そこら辺はあった。IPS細胞騒動の時は3回取材したが、結局は掲載しなかった。載せなかったことで編集局長賞をもらった。だから、あれは無意識の議題設定だったのかもしれない。


斗ヶ沢記者  STAP細胞について見抜けたのかというと、それは99%以上無理だったと思いますね。共同研究者の名前を見たら疑うなんてあり得ないレベルの人たち。しかも、ネイチャーが議論がありうるものを掲載したという2つで。そこを疑おうと思ったら、小保方さんやそのチームにちょっと何かあると思うしかない。今回は記者が途中で見破って批判的なことをやるのはまず不可能だった。記者はニュースを追わなくてはいけないので、その時々に出たのを不十分の消化のままでも書いてしまわないといけないことがしょっちゅうある。時々の軌道修正をどれだけ機敏にできるのかというほうが重要だと思う。


元村記者  一報が大きければ軌道修正も大きくできる。でも、皆さん、社会面の3段の記事で読んでいらっしゃって、この病気が治ると思って読んでいるものがひょっとしたら(その後)撤回されているかもしれない。撤回そのものがニュースとして入ってこないので分からない。だから、逆説的ですが、大きいことは修正しやすいかもしれない。


斗ヶ沢記者  以前と違って新聞は訂正を出すことにためらいがなくなった。


元村記者  訂正もそうですし、軌道修正もそうですね。


質問者  STAP細胞について。他の論文の共著者はなぜおかしいと見抜けなかったのか。


元村記者  小保方さんは若いですが、独立した研究者。その人の研究を疑うことができないというのがまずある。


斗ヶ沢記者  多くの人は性善説ですよね。元村さんが新しい細胞ができたと送ってきた時、別の細胞だとはまずは疑わずに見てしまうのではないか。


質問者  (小保方さんの)学位論文の件など、どう考えても内部告発ですよね。ああいう裏を取る方法もあるのではないか。


元村記者  ネットが普及したことで、論文が怪しいなと思っている人がつながるようになり情報交換をする。皮膚感覚として、不正が発覚する例は増えていると思う。20年前など不正などの騒ぎはあまりなかった。


斗ヶ沢記者  画像の切り貼りはある人が調べてネットで公開した。今回の特徴はまさにそれ。今までは内部告発か、記者が調べてつかんでいた。今は個人が探し出せる。


元村記者  20年前なら、疑問を感じた人はまず封書で新聞社に送る。うさんくさいなとか、色眼鏡で見て専門家ではないからと、うやむやになるケースはあった。今はネットが一つのメディアになっている。 【まとめ・平野美紀、馬場直子/デジタル報道センター】



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毎日新聞東京本社1階にある「MOTTAINAI STATION」を毎日メディアカフェとして午前11時から午後6時(イベント開催日は午後8時30分)まで開放しています。新聞や雑誌を読んだり、タブレット端末で毎日新聞ニュースサイトなどを検索したりできます。イベントは全て無料で参加できます(予約制、申し込み順)。

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