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記者報告会「『誰が科学を殺すのか』の舞台裏」

開催日:12月13日(金)18:30~20:00 イベントのカテゴリー:出版記念

毎日メディアカフェの記者報告会「『誰が科学を殺すのか』の舞台裏」が12月13日、毎日ホールで開催されました。
 この10年の間に科学技術分野の論文数が先進国で唯一減少するなど、さまざまな指標から日本の研究力衰退が指摘されています。かつて「ものづくり」で戦後の高度経済成長をけん引した企業も勢いを失っています。こうした衰退の実態と背景に迫る単行本「誰が科学を殺すのか 科学技術立国「崩壊」の衝撃」(毎日新聞出版)が好評発売中です。毎日新聞朝刊の科学面で1年あまり掲載した長期連載「幻の科学技術立国」を再構成・加筆した内容です。連載では、困窮を極める地方大学や企業の研究開発の衰退の実態をリポートするとともに、内閣府主導の大型研究プロジェクトで起きた「やらせ公募」をスクープするなど、政府が推し進めてきた公的研究費の「選択と集中」がもたらす弊害を詳報しました。また、度重なる大学改革がさまざまなひずみを生んだ背景を分析し、米国をもしのぐ成長を見せる中国をはじめ、海外の最新の動きも紹介しました。
 出版を記念した記者報告会には科学環境部の取材班メンバーから須田桃子、斎藤有香、荒木涼子の3記者が登壇しました。
 須田記者は1975年、千葉県生まれ。2001年、早稲田大学大学院修士課程(物理学専攻)を修了後、毎日新聞社に入社。水戸支局を経て06年から科学環境部。生命科学、生殖補助医療、宇宙などを幅広く取材。連載「幻の科学技術立国」では取材班キャップを務めた。単著に日本の生命科学史に残る研究不正問題を追った「捏造の科学者 STAP細胞事件」、約1年間の米国取材を基に生物学の新たな潮流を描く「合成生物学の衝撃」があります。
 斎藤記者は北海道札幌市生まれ。北海道大学理学研究院化学部門修了。大学院時代に北大の科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)の1期生として、サイエンスコミュニケーションを学びました。2007年に毎日新聞社に入社、2012年から科学環境部記者。これまで宇宙、天文、環境問題などを担当。現在は原子力 関連の取材に携わっています。
 荒木記者は1985年、埼玉県生まれ。2012年、筑波大学大学院数理物質科学研究科化学専攻を修了後、毎日新聞社に入社。静岡支局に配属され、静岡県内の事件や裁判、スポーツ、県政などを5年間取材した。主な取材は裁判をやり直す再審制度や死刑制度など。17年から科学環境部に異動。iPS細胞などの細胞を治療に利用することを目指す再生医療から、水深200mより深い海にすむ深海生物の連載などさまざまなテーマを取材しています。現在の担当は原子力です。
 最初に、須田記者が取材班結成に至る経過を話しました。「2014年、STAP細胞事件を担当しました。調査報告書に次のような文章があります。『不正防止が大きな流れになるためには、(中略)より広い視点で研究者倫理を考え、教育を行う必要がある。そこで基礎となるのは、論文のインパクトファクターでも、獲得研究費の額でも、ノーベル賞の獲得数でもなく、自然の謎を解き明かす喜びと社会に対する貢献である』。この文章を読んで感銘を受け、こうであってほしいと思いました。今の日本はそれができる環境なのかと疑問に思いました。それを取材して検証したいという思いがありました。国立大学の運営費交付金が減っている、若手研究者のポストが少ない、安定した職に付ける人が少ない、研究者の好奇心に基づく研究が少なくなっているなどの問題があります。日本の研究力は低下していると感じます。2016年9月の毎日新聞記事ですが、運営費交付金による個人研究費は6割の人が50万円未満、13%が10万円未満です。これではテーマを持って研究することができない。『選択と集中』の現場では、お金が下りている研究テーマはあります。2018年12月に量子コンピューターを開発したという発表がありましたが、内外から『量子コンピューターとは言えない』との批判が相次ぎました。どうしてこんな誇大広告をしたのかという疑問がわきました」
 続いて、取材班のことと、連載内容を語りました。「取材班は2017年9月に総勢7人で取材を始めました。取材方針は現場取材を重ねる、当事者の生の声を集める、裏付けをとるということです。連載は2018年4月にスタートしました。日本が強かった材料科学の分野で競争力を失いつつあることを、データを示して書きました。論文数などで、日本の順位が下がっています。連載は全4部構成です。第1部はアカデミアの世界のことです。国主導のプロジェクトが増えてきました。第2部はどうしてそうなったのかです。大学改革はどのように始まったのか。東京大学だけが一人勝ちとも言われます。連載の特徴は企業の研究にも目を向けたことで、第3部で取り上げました。日本の企業の力も落ちているのではないか。第4部は海外の潮流です。中国、米国、アイスランドを取材しました」
 「国立大学の運営費交付金は年々減っているだけではなく、大学間格差が大きい。少ししかもらえない大学もあります。鹿児島大学准教授は環境に関する研究をしていますが、分析装置が故障しても直すお金がない。タンカー事故で油が流出し、環境汚染が起こっても出張するお金がない。つくば大学の屋根が老朽化で崩落するという出来事もありました。日曜日の朝だったからけが人はいなかったのですが、平日なら危なかった。人が減り、施設が老朽化しています。各大学はネーミングライツ(命名権の販売)などで資金確保に必死です。大型研究プロジェクトは誇大広告的事例が相次いでいます。2018年5月、取材班のスクープが1面トップに掲載されました。内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)で、候補者が内定しているのに、公募で公平に選んでいるように見せていたのです。SIPでは、第1期が終わって検証してから第2期を検討するはずだったのに、検証されないまま続いています。第2期SIPは5年間で1500億円規模になります。運営費交付金の削減額を上回る金額です」
 「第2部の科学技術政策では、歴史を遡り、国立大学法人化の経過を書きました。国立大学アンケートでは、国主導の大学改革を評価しているのは14%と少ない割合でした。法人化をめぐる動きではバトルもあり、元文部科学相の遠山敦子さんは『日本の知的基盤が脆弱になる』と訴えました。『運営費交付金削減は主食を削るようなもので、やってはいけない』とも語っています。大学だけではなく、企業の研究力も低下しています。研究開発費のランキングでかつて1位だったトヨタ自動車は13位になりました。企業発の学術論文も減っています。第3部で、SIPの一つである『革新的燃焼技術』を取り上げています。エンジンの熱効率を上げる研究で、民間の商品化を前提としたプロジェクトです。自動車業界から出す資金の9倍の資金を国が出しているのはどうかということです。第4部は海外の潮流で、中国はすごい成長をしている。研究予算も増えています。1年あまりの連載をまとめたのがこの本です。連載記事のほか、関連記事の内容含め、加筆しました」
 続いて、斎藤記者が話しました。「大学の現場で研究者の声を聞きました。つくば大学の50代女性教授は企業に勤めた後、大学に戻りました。法人化に伴い、運営するための会議に出たり、外部から研究費を集めるため申請書類を書いたりすることに時間が取られると言っていました。外部資金の確保に追われ、研究の質が下がり、資金が得られないという負のスパイラルになっていると感じました。国は研究力の向上のため、大学院生を増やしたのですが、雇用の不安定な研究者が増え、博士課程の人数は2003年をピークに減少しています。一方、この1、2年、企業が博士課程修了者を積極的に採用しているという動きもあります。中国の科学技術政策の取材もしました。中国には世界最大の電波望遠鏡が建設されました。直径500m。4500枚の鏡を人力で張りました。半径5kmの住民を強制転居させたそうです。『海亀政策』という、海外で学んだ研究者に中国に戻ってもらう政策を進めています。論文数は2016年に米国を抜きました。論文の質も高く、引用数が多い論文が急増しています」
 最後に、荒木記者が話しました。「再生医療の現場を取材しました。山中伸哉教授のiPS細胞が有名ですが、受精卵由来のES細胞というのも組織、臓器になる可能性のある細胞です。日本ではiPS細胞が主ですが、世界ではES細胞の研究が盛んです。iPS細胞のストック事業が進められていますが、一つひとつの安全性を調べると膨大な作業が必要であること、企業が自分たちで細胞を作ることが可能でストックを必要としないなどの課題があることが分かりました。ストック事業に意味があるのか、iPS研究だけでいいのかを検討しなければなりません。両方とも進めれば、研究成果が上がるという意見もあります。人工血小板を開発する再生医療ベンチャーの社長は米大使館関係者から『面白い研究だからぜひ補助金を出させてほしい、必要な金は全部出す。その代わり、知的財産権は全てアメリカのものになる』と言われました。日本の企業に資金調達を依頼しても、なかなか応じてくれない。知的財産権がアメリカに渡るのはいやだ。そこで、社長は高校時代の同級生である元経産省官僚に相談したら、官民ファンドを紹介してくれた。同級生に会っていなければ、研究費を確保できなかったかもしれないと、社長は言っています。ベンチャーも人脈頼りということです。中国が攻勢をかけるアイスランドでの取材もしました。北極をめぐる研究開発が熱い。北極海の天然資源の争奪戦です。北極海航路も注目されています」
 この後、3テーマについて、話しました。まず、「取材を通じて最も驚きや怒りを感じたこと」。3記者が模造紙にそれぞれの答えを書きました。須田記者は「内閣府主導の巨大プロジェクトのずさんさ」、斎藤記者は「疲弊した研究現場」、荒木記者は「研究費申請の禁忌ワードがある」でした。禁忌ワードについて、荒木記者は「科研費などを取ろうとすると、書いてはいけない言葉がある。東日本大震災前の話ですが、電力関係では再生可能エネルギー、太陽光などの言葉が入ると採択されない、再生医療分野だと、iPS細胞と書かないと通らないとか言われています」と説明しました。
 次は「研究力低下の最大の要因は」。須田記者は「『出口志向』と『選択と集中』」、斎藤記者は「科学の『経済』化」、荒木記者は「無駄を認めないこと」でした。
 最後に、「日本の科学が元気を取り戻すには」。須田記者は「多様性とEBPM」。EBPMは「証拠に基づく政策立案」です。「スローガンとして掲げるだけではなく、実行してほしい」と述べました。斎藤記者は「科学する『人』を育てる、荒木記者は「科学と技術を切り離して考える」でした。
 この後、参加者との質疑応答がありました。「誰が殺したのですか」の質問に、須田記者は「読者に考えていただくための材料は本書に書かれています。読んでいただければ、この人たちではないかというのが見えてくるのではないでしょうか」と答えました。



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