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「しあわせの牛乳」から、未来を考える

開催日:6月29日(土)18:30~20:00 イベントのカテゴリー:一般公募イベント

毎日メディアカフェのイベント「『しあわせの牛乳』から、未来を考える」が6月29日、毎日ホールで開かれ、150人が参加しました。
 岩手県岩泉町にある「なかほら牧場」は1年を通して牛が山で放牧されている日本では数少ない牧場です。牛は山で排泄し、糞を肥料にして育った無農薬・無肥料の野シバを食べています。自然に交配・分娩し、山林と共生しています。人間は、子牛の飲み残しを搾乳し、それを牧場内の施設で加工しています。牧場はアニマルウェルフェア(動物福祉)認証農場国内第1号になりました。このような「山地(やまち)酪農」を完成させた牧場長、中洞正さんの生きざまに迫るノンフィクション「しあわせの牛乳」(ポプラ社)が第2回児童文芸ノンフィクション文学賞を受賞しました。これを記念したトークイベントです。中洞さんのほか、なかほら牧場卒業生で「薫る野牧場」牧場主の島﨑薫さん、「しあわせの牛乳」の文章を書いたフォトジャーナリストの佐藤慧さん、写真を担当したフォトジャーナリストの安田菜津紀さんの4人が登壇しました。
 はじめに、佐藤さんが「世界の紛争からしあわせの牛乳まで」と題して話しました。佐藤さんはDialogue for People所属フォトジャーナリスト、ライター。アフリカや中東、東ティモールなどで、紛争や貧困の問題などを取材。東日本大震災以降、継続的に被災地の取材もしています。
 佐藤さんは次のように話しました。「世界の社会課題に直面する人々の姿を伝える仕事をしています。かつて、NGOにいたとき、ザンビア共和国に派遣されました。後発発展途上国というレッテルが張られていました。平均寿命は36.7歳、1日1ドル以下で生活する人が60%以上。行ったのは電気、ガス、水道はない地域です。行く前は怖かったのですが、行ってみると、そうではなかった。物々交換が成り立っていて、社会から阻害されて路上生活をしている人はいません。不便なように思えますが、不便さがあるからこそのありがたみを感じました。日本にいるときはスーパーで売っている肉は、誰か殺してくれるものでした。ザンビアでは、豚を自分でさばきました。内臓には命の温もりがありました。日本では肉をいただくときに、命をいただくことを忘れていると思いました」
 「東日本大震災は大きな衝撃でした。震災後、陸前高田市で家族を捜しました。母は1カ月後に遺体で見つかりました。父は命を取り留めましたが、心を痛めていて、何のために生きているのかと言っていました。私自身も鬱々とした状態でした。そんなとき、なかほら牧場の取材の話が入りました。行ってみると、澄んだ空気や朝日に心がゆったりとしてくる。四季の移り変わりを見ることは大切なことでした。3年近く通い、生きていくエネルギーがわいてきました。冬は命がない季節ではないと言われました。泣いたり悲しんだりする時期は何かを育む時期ではないか。自然は人の命を奪うだけではなく、育んでくれると感じました。寝転がって牛とたわむれる中洞さんの姿を見るだけで幸せな気持ちになります」
 続いて、中洞さんが話しました。中洞さんは東京農業大学農学部在学中に、猶原恭爾氏が提唱する山地酪農に出合い、 直接教えを受けました。卒業後、岩手県岩泉町で酪農を開始。野シバと国産乾草主体の飼育、および通年昼夜放牧・自然交配・自然分娩・自然哺乳でノーストレスの健康な牛を育てる山地酪農と、その健康な生乳による乳製品の製造販売を組み合わせた「中洞式山地酪農」を確立しました。著書に「幸せな牛からおいしい牛乳」( コモンズ社 )、「ソリストの思考術 中洞正の生きる力」(六耀社)などがあります。
 中洞さんは次のように話しました。「私が生まれたころはほとんど自給自足の生活でした。昭和30年代に入って、社会は大きく変わりました。お金がないと生きていけなくなり、みんな、東京に行きました。こういう経済の仕組みで、未来永劫やっていけるのかと疑問を持ちました。牛乳はなじみのある飲み物ですが、ほとんどの人は酪農の現状を知りません。牛乳の紙パックには牛の放牧の写真が使われています。放牧されているのは育成牛です。お乳を出すときには牛舎につながれます。4、5年の間、一歩も外に出ません。消費者は放牧されている牛の牛乳だと思っています。国はいま、フリーストール牛舎というのを推奨しています。酪農家が減り、バター不足になったことがありました。そこで、何千頭の牛を飼う仕組みを作ったのです。日本の酪農は戦後、米国の余剰食物を売るための酪農と位置づけられました。配合飼料は米国のトウモロコシを使っています」
 「(19歳の牛の写真を見せながら)牛の寿命は本来、20年以上です。真っ当な草を食べさせていれば、それだけ生きるのです。家畜福祉ということが言われ始めました。なかほら牧場はアニマルウェルフェア認証農場国内第1号になりました。日本の牛乳は白いですが、なかほら牧場の牛乳は乳白色です。干し草ではなくカロテンの多い青草を食べていて、草の色素が牛乳に入るからです。北欧諸国は90%以上が低温殺菌牛乳ですが、日本は2%です。酪農は穀物生産の不適な地域で行われる農業です。山に牛を入れると、笹や木の葉を食べます。冬はマイナス20度になります。暑さ、寒さを体感することは健康によいのです。野シバは地下に根毛が伸びます。岩泉町は2017年の台風10号で多くの被害が出ましたが、なかほら牧場の山は一切崩壊しなかった。野シバの放牧地は保水力が高いことが分かりました。人間の生活は自然からかけ離れてはいけない。人間らしい生き方は、よく働き、よく食べ、よく眠ることです。そういう当たり前のことができなくなっています。今の日本社会の問題は農水林の第一次産業が解決すると思います」
 この後、休憩に入り、なかほら牧場の牛乳の試飲がありました。乳白色の濃い牛乳を参加者が味わいました。
 続いて、進行役の安田さん、「薫る野牧場」の島﨑さんを加えた4人でのトークが始まりました。
 安田さんはDialogue for People所属フォトジャーナリスト。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進め、東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けています。著書に「写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って」(日本写真企画)など。上智大学卒。TBSテレビ「サンデーモーニング」にコメンテーターとして出演中です。
 島﨑さんは1989年生まれ。東京農業大学生物産業学部食品科学科を卒業し、なかほら牧場で働いた後、2016年に神奈川県の大野山へ移住し、「薫る野牧場」を設立しました。
 安田さんはまず、市販の牛乳との違いを中洞さんに尋ねました。中洞さんは「日本の牛乳はどの牧場の牛からの牛乳かが分かりません。農協が集めた牛乳をメーカーに出すからです。なかほら牧場の牛乳は、なかほら牧場の牛から出た牛乳だと言えます」と答えました。
 島﨑さんには、なかほら牧場に行ったきっかけや薫る野牧場設立の経過を尋ねました。島﨑さんは「東京農業大学食品科学科にいたのですが、乳製品が好きで、乳業会社に行きたいと思っていました。ところが、大学3年生のとき、中洞さんの本を読んで、大学の大先輩に当たることを知り、何回か牧場に行きました。牛を見るのも初めてでした。年末年始に研修に行ったのですが、一晩で2、3mの雪が降り、電気が止まり、水が出ないという状況でした。雪を鍋に入れて、薪を燃やして飲み水を作ります。こうやって生きているのだなと学びました。乳業会社ではなく、ここで仕事をしたいと思いました。なかほら牧場で4年半働きました。製品作りを任されて、自分が牧場を始めるときに、考える力をつけてもらいました」と話しました。
 中洞さんは島﨑さんについて、「手取り足取りの指導はしません。自分で考え、いろいろな障害を乗り越える。自分で作り上げるしかない。泣き虫だったので大丈夫かと心配しましたが、2年近くたち、やっていることに自信を持ちつつある。やっていることもしっかりしている。経済的にめどが立ちつつあるのが自信につながっているのではないか。次の山地酪農を背負う人間に育ってほしい」と述べました。
 島﨑さんは生乳ではなく、ソフトクリームの原液を販売しています。平塚のレストランなどで使われているそうです。
 「しあわせの牛乳」を一般向けのノンフィクションではなく児童書にした理由について、佐藤さんは「中洞さんの本が出ていて、それを上回ることはできないと思いました。山地酪農は未完成の酪農だと思います。昔に戻るというのではなく、実は最先端なのかもしれない。牛が可愛くて、幸せな牛と生きるのは楽しいということを伝えたいと思いました」と説明しました。
 この後、なかほら牧場の若手スタッフ5人が短いスピーチをしました。
豊田千波さん
「スタッフ4年目です。愛媛県出身です。大阪の専門学校に通っていたときに、なかほら牧場を知り、3回研修に行きました。牛乳が苦手でしたが、こんなに美味しい牛乳があるのかと感動しました。牛乳は日によって甘みが強い日、さっぱりした日があり、乳製品を作るのがとても楽しいです。牧場で長く働くことが夢です」
大橋宏美さん
「牧場6年目で、牛舎班にいます。毎日牛からエネルギーをもらっています。同志のような存在です。牛に一瞬、一瞬を快適だと思ってほしい。牛のお世話に励み、山地の整備に努めたいと思います」
岡本美紀さん
「鉄道の駅員をしていました。自然とはかけ離れた生活をして、精神的に病んだとき、中洞さんを知りました。4年目で、宿泊、視察者の案内などをしています。牛乳が美味しいからと来てくれるのですが、こういう背景があって、美味しいのだと説明しています。消費者がどういうふうに商品が作られたかを知る、賢い消費者が増えることが大切だと思います。そのために発信できる人間になりたいと思い、がんばっています」
庄司茜さん
「5年目です。神奈川県出身で、田舎暮らしに憧れました。これまでは乳製品製造、今年度から牛の乳搾りをしています。自分でも牛を飼える生活をしたいと思っています」
林直秀さん
「5年目です。青山学院大学経済学部の学生だったとき、六本木の中洞牧場ミルクカフェ(当時)で、アルバイトスタッフをしていました。牧場に行くぞと日帰りで牧場に連れられて行きました。衝撃を受けました。不動産会社に就職しましたが、1年で病んでやめました。そのとき、ミルクカフェで働いたことを思い出し、牧場に連絡しました。今はネットショップの店長、広報的な活動をしています。知れば知るほど、なかほら牧場は『やばい』ということに気づきます。『やばい』というのは危ない、面白いということです。多くの人に、なかほら牧場のことを知ってもらいたい。将来は牧場をしてみたい。同い年の島﨑さんにライバル意識を持っています(笑い)」
 最後に、中洞さんは「どんな社会がいい社会なのか。どう生きるのか。次の世代の社会がどうあるべきかを考えながら生きてほしい」と参加者に呼びかけました。



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