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佐々木宏人OB記者報告会「終戦3日後の神父射殺事件を取材して見えてきたこと」

開催日:6月20日(木) イベントのカテゴリー:出版記念

佐々木宏人OB記者報告会「神父射殺事件を取材して見えてきたもの」が6月20日、毎日メディアカフェで開催されました。
 佐々木さんは1941年北海道釧路市生まれ。65年毎日新聞社入社。経済部、政治部、経済部長、広告局長、名古屋代表などを歴任しました。現在はNPO法人所属のジャーナリストで、関東学院大学キリスト教と文化研究所客員研究員を務めています。
 終戦3日後の1945年8月18日に横浜市のカトリック保土ヶ谷教会で、横浜教区の戸田帯刀神父が射殺死体で発見された未解決事件を取材して、2010年から8年間にわたり、「福音と社会」(カトリック社会問題研究所)にノンフィクションを連載しました。これをまとめた「封印された殉教」(上下巻、フリープレス社刊)が18年10月に出版されました。
 佐々木さんは「74年前の神父射殺事件が現代とどうつながっているかを考えたい。平和について考えなければならないいま、平和を求めて射殺された神父のことを知ってもらいたい」と趣旨を語り、報告を始めました。
 「山梨県出身の戸田神父は保土ヶ谷教会で射殺死体で見つかりました。取材を始めた当時は、カトリック界でも知っている人はほとんどいませんでした。38回連載しました。戸田神父のことを知ったのは、甲府支局長に赴任した時です。妻が子ども4人とカトリック教会に行っていました。一緒に行った時、戸田帯刀の名前を見て、珍しい名前だなと思いました。1986年刊の『山梨県カトリック宣教百年史』を読んだら、戸田神父のことが書かれていました。終戦の3日後、教会内で神父が射殺された。すごい事件だと思いました。当時は40代で、その後も本社で忙しい時期が続きましたので、事件を調べることもなく過ぎました。会社を退職して、2006年4月にカトリック荻窪教会で洗礼を受けました。64歳でした。同年11月、遠位性ミオパチーという国指定難病であることが分かりました。手と足の末端の筋肉がだめになるという病気です。患者数は全国で約400人。若い人が多く、高齢でなる人はごく少ないと言われています。毎日新聞の『ストーリー』で、遠位性ミオパチー患者団体の代表である織田友里子さんのことが紹介されました」
 病気が判明したころ、佐々木さんは「根っこと翼 美智子皇后さまという存在の輝き」(新潮社)著者でカトリック信者の従姉妹・末盛千枝子さんから「あなたはこの本(戸田神父の本)を書くために神様に呼ばれたのよ」と言われました。「『山梨県カトリック宣教百年史』を著したテムペリーニ神父は、戸田さんの足跡を同級生などに聞いて調べ、『彼について知っている人は少ない』と書いています。なぜ、少ないのか。不都合な真実があるのではないか。真実を解明したいというジャーナリストの血が騒いで、調べ始めました。保土ヶ谷教会の聖堂入り口脇に戸田師の石碑があります。『私は自分の生命にかけて 日本のため 世界平和のために働きます』という戸田神父の言葉が残っています。2005年に石碑を建立したバリー・ケインズ神父は『戸田教区長の勇気ある言葉を知って、私もそのように働きたいと思いました。将来は歴史の上にあるものだと固く信じます。歴史から逃げることは危ないことなのです』と述べています」
 続いて、事件の詳細を話しました。「戸田師はリベラル思考の持ち主でした。1941年札幌教区長になりましたが、『今こそ日本が戦争に勝っているが、アメリカやイギリスは強国だからこれを向こうに回して戦えば、将来どうなるかわからぬ』と戦争の行方に懐疑的なことを4人の神父に語ったとして、軍刑法違反で逮捕されました。3カ月拘留され、無罪判決を得ました。1944年の横浜教区長着座式で『生命をかけて 日本のため 世界平和のために働きます』と語りました。当時は平和という言葉を語るのはとても勇気のあることです。終戦の翌日、司教座講堂・山手教会を接収中の海軍横浜港湾警備隊本部へ『軍隊がキリスト教会を占領しているとなると、占領軍が来た後たいへんなことになる』と言って、変換を求めました。その2日後に射殺されました。海軍から連絡を受けた憲兵が射殺したというのが定説です。憲兵の使っていたナンブ式の拳銃の弾が見つかっています。また、バチカンを通じての和平工作への報復説というのもあります。戸田師が太平洋戦争終結に向けての和平工作に関与したことが伺われる文書が残っています」
 実は、「犯人」の自首がありました。事件から約10年後の昭和31~32年ごろ、40代の男が「私が犯人、憲兵だった。謝罪をしたい」と吉祥寺教会に自首してきたのです。ところが、東京教区はなぜか男に会わず、「赦しを与える」と電話連絡しました。「犯人」はそのまま行方知らずになりました。「バチカンの秘密資料館で戸田師の事件について資料を請求して、3種類の文書が届きました。事件後間もない報告によると、憲兵には触れていない。神学生が3日間拘留されたとあり、神奈川県警察は内部犯行と見ていたのではないかと思われます。しかし、神学生は釈放され、憲兵説が定着しました。警察は憲兵には手を出せないと捜査を放棄しました」
 この後、佐々木さんは戦前の宗教弾圧を振り返りました。「軍事教練・上智大学靖国神社参拝拒否事件」など宗教が政治に取り込まれていく過程を概説しました。プロテスタントではホーリネス教会事件、セブンスアドベンチスト教団事件、カトリックでは大阪・北野教会シルペン・ブスケ神父がおとり捜査で憲兵隊に逮捕され、獄死した事件、兵庫・夙川教会のアルホンス・メルシェ神父が逮捕・拷問された事件、新潟高田教会では神父ら8人が不敬罪で逮捕される事件がありました。「メルシェ神父はすさまじい拷問を受けています。憲兵が終戦後、自分のことを言わないでほしいと頼み込んできたそうです。宗教弾圧への対処として、日本基督教団(プロテスタント)、日本天主公教教団(カトリック)はいずれも戦闘機献納運動をしたり、大日本戦時宗教報国会を結成するなど、戦争協力の道を進みました」
 戦争協力へのキリスト教各教派の自己批判はあまりなかったといいます。「戦前の弾圧事件に対して長く無関心でした。「戸田師事件を追及すると、自分たちの戦争中の行動への批判を引き起こすかもしれないと懸念したのでしょうか。戦時中の指導者が亡くなった後で、ようやく戦争協力への責任を認めました」
 最後に、事件の今日的意義について語りました。「取材した当時は、憲法改正が現実化することはないと思っていましたが、特定秘密保護法、共謀罪(改正組織的犯罪処罰法)などができた。安倍首相は2020年に憲法改正を目指すと言っています。私は憲法9条だけではなく、憲法20条の信教の自由が重要だと思っています。戦前の思想弾圧については知られているが、宗教弾圧のことを知る人は少ない。今も各宗教間での連携が十分ではない。市民レベルで連携して、良心の自由、言論の自由、信教の自由の基本的人権を守ることが必要です」
 終わりに、ドイツのプロテスタント神学者で強制収容所に7年間収容されたマルティン・ニーメラー牧師の有名な言葉を紹介しました。
 「ナチスが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった。私は共産主義者ではなかったから。社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、私は声をあげなかった。私は社会民主主義ではなかったから。彼らが労働組合員たちを攻撃したとき、私は声をあげなかった。私は労働組合員ではなかったから。彼らがユダヤ人を連れて行ったとき、私は声をあげなかった。私はユダヤ人ではなかったから。そして、彼らが私を攻撃しとき、私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった」
 この後、参加者の質問に答えました。「誰の犯行か」との質問に「憲兵だと考えます。戸田師の倒れ方から、至近距離で撃たれたことが分かります。右目を貫通していますが、恐らく眉間を狙ったのでしょう。銃の扱いに慣れた人だと分かります。昭和31~32年ごろに自首してきた男は、確証はありませんが、犯人が苦渋の上に自首して来たということはありうると思います。殺人事件は当時、時効が15年でした。その前に自首して来ています。良心の仮借に耐えかねたと考えられます。余談ですが、自首した男は『私は阿佐ヶ谷に住む佐々木です』と話したそうです(笑い)」と答えました。



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