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元村有希子のNEWSなカフェ「手で見るいのち」

開催日:5月16日(木)18:30~20:00 イベントのカテゴリー:ScienceCafe

元村有希子のNEWSなカフェ「手で見るいのち」が5月16日、毎日メディアカフェで開催されました。
 4月まで連続開催してきた「元村有希子のScience Cafe」に変わる新シリーズ「元村有希子のNEWSなカフェ」の第1回です。
 骨を触り、いのちについて学ぶ――。筑波大付属視覚特別支援学校では、視覚障害がある生徒たちへのユニークな生物の授業が40年以上続けられています。人間は情報の8割以上を視覚から得るといわれますが、この教室では、教科書を使わず、触覚と対話を通した本質的な学びが生み出されています。毎日新聞科学環境部の柳楽未来記者が現場に密着したルポ「手で見るいのち―ある不思議な授業の力」(岩波書店)が2月に出版されました。同校を卒業後、科学関係の仕事についた八木陽平さん、この授業を引き継いだ「三代目」の武井洋子先生を招いて話を聞き、参加者が実際に骨の標本に触る体験をしました。
 元村さんのあいさつの後、さっそく武井さんの授業が始まりました。武井さんは筑波大付属視覚特別支援学校教諭。1962年生まれ。筑波大大学院修了後、神奈川の県立高校教諭を経て90年、筑波大付属盲学校(現・筑波大付属視覚特別支援学校)に赴任。同校で75年から続く中学1年の生物の授業を引き継ぎ、「骨を触る授業」を展開しています。視覚障害のある生徒たちに科学の魅力を伝える「科学へジャンプ」にも携わり、各地で実験や観察の楽しさを紹介しています。
 武井さんは次のように話しました。「私が教えているのは全盲と弱視の生徒です。弱視と言っても、視力が弱いというだけではなく、視野が狭いとか、真ん中が見えなくて周辺だけ見えるとか、まぶしいことが苦手だったり、逆に暗いと見えないといったように、さまざまな子どもがいます。私はこの授業をする三代目です。授業は中学1年生が対象です。本物の骨格標本をじっくり手で触るという授業です。見るということはすごいことで、一瞬で全体像が分かってしまいます。そこで、見えないように黒い袋に入れてきました」
 机の上には、計10セットの標本が黒い袋に入れられています。参加者は順に、黒い袋の中に手を入れて、触りました。参加者は触りながら感想を言います。「背生物の観察のときは、スケッチしていましたが、授業では言葉で書きます。「穴が空いているところがあります」「臼歯がない」「オオカミみたいな感じです」といった感想が出ました。
「授業では、オオカミみたいという感想が出ると、どうしてオオカミだと思ったのと対話しながら進めます。触るというのは部分です。次には全体像をとらえるつもりで触ってください。私たちの下あごはU字型ですが、この標本はV字型です。真ん中で左右に分かれています」
皆が体験した後、標本を袋から取り出しました。「どきどきします。触ったから、少し想像できます」と元村さんは話しました。
 武井さんは答えを明らかにしました。「この骨は犬科を使っています。欧米ではコヨーテの骨を飾る風習があり、骨の標本が売られているそうです。一番安価に手に入るので、コヨーテを中心に使っています。肉食か草食かを知る決め手は何でしょうか。奥の歯が尖っていますね。肉食の動物は自分で狩りをしなければなりません。仕留めるにはどの歯を使いますか。長い牙がありますね。歯が尖っていて、牙があると肉食だと思ってしまうのですが、実は決め手はそこではありません。牙ではなく、牙の埋まっているところを見てください。目で見ては分かりません。触ると分かります。出ている牙よりも埋まっている牙のほうが長いですね。サルのオスには牙がありますが、埋まっている部分が浅い。浅いと、かんだときに牙が抜けてしまうかもしれませんね。サルは威嚇のために牙を使っているようです。牙がどれだけ入り込んでいるかが使える牙かどうかのポイントです。肉食の動物はかんで引きちぎって飲み込みます。引きちぎるときに、奥歯を使います。大臼歯です。大臼歯を意識しながら、うまくかみ合わせてみてください。他の臼歯は上と下の歯がぶつからないようにかみ合わさっているのに、大臼歯だけはかぶさるように、下の臼歯の外側と上の臼歯の内側がすれ合っているのが分かります。すれあって何かを切る道具は何ですか。ハサミです。埋まった牙と、すれ合う歯があるというのが肉食動物の歯の大事なところです」
 「授業では、生徒に発見してもらうように対話しながらします。中学1年生 6人に1回2時間、それを3週連続で授業します。最初は構内の植物を中心にやっています。発見力、観察力を育てようとしています。私は長くやっているうちに、ほめ上手、発問上手になりました」
ここで、授業を見た柳楽記者が「授業はとても盛り上がっています。生徒の笑い声が絶えない授業です」とコメントしました。
 武井さんの話が続きます。「普通の中学では、顕微鏡を使って見ます。顕微鏡があるということは教えますが、生徒は見て確かめることができない。自分の感覚で得た情報ではないので、短い時間で終えます。自分の感覚で情報を得て考えていく授業が必要です。それを考えたのが初代の青柳昌宏先生です。私は2代目の鳥山由子先生の授業を見てとりこになりました。1年間、週3時間のうち2時間は触って観察し、分かったことを言語化して文字にするという授業を1年間やります。最初は植物を使いながらやります。生徒はたくさんのことを発見します。発見者の立場に立てる観察を念頭に置いています。植物がうまくいくと、動物もうまくいきます。植物と違うところは骨の授業は考察力を加えることです。全体の中でここがこうなっているということに気づきます」
 ここで、違う骨を出しました。「大きな動物B」「小さな動物C」です。「肉食かどうかを見てください。動物Bの歯を合わせてみましょう。左の上下を合わせると右がずれます。右の上下を合わせると左がずれます。すりつぶして食べる動物で、草食だということになります」。シカの骨でした。
 「動物Cは小ささからどういう動物かが分かります。牙があり、奥まで入っています。目が大きいのが特徴です。よく見ているということです。下あごを外して裏側にします。穴が空いています。内耳、中耳の部屋です。それが大きいということは、聴覚が発達している、平衡感覚が優れているということです。目が大きいので、額が狭い。『ネコの額』と言いますね。自分の感覚で特徴をとらえ、考えます。ネコと答えるには、ネコの知識を持っていなければなりません。家畜中心に授業をした後、上野動物園に行って、動物園の動物の骨で授業をします」
 続いて、八木陽平さんが話をしました。八木さんは宇宙航空研究開発機構調査国際部主任。1964年生まれ。筑波大付属盲学校(現・筑波大付属視覚特別支援学校)を卒業後、国際基督教大(ICU)で物理学を専攻。米テキサス大学大学院での留学から帰国後、宇宙開発事業団(現・宇宙航空研究開発機構)で小型衛星の開発などに携わりました。趣味はマラソン。ベストタイムは3時間を切り、日本ブラインドマラソン協会常務理事も務めています。
 八木さんは「高校からだったので、今日のような授業は受けていなかったので、新鮮でした。私が鳥山先生から受けた授業は化学で、化学薬品を混ぜた実験をしていました。ガスバーナーをつけることから始めました。(危険はないのかという問いに)少しの危険は覚悟してやっていたのだと思います」と話しました。武井さんは「事故があると実験できなくなるので、危険がないように組み立てられています。工夫がたくさんあります。塩酸は薄めた塩酸を使います。ピペットも練習すれば量が分かります。ガスバーナーは分解させて、どこからガスが出ているかを確かめながらやっています。ありとあらゆる工夫があって、安全に実験できます」と補足しました。
 八木さんの前には、長方形の装置がありました。それを使うと、印刷物の文字を点字に変換できるそうです。八木さんは盲学校卒業者で初めて、大学で物理を学んだ人です。筑波大付属視覚特別支援学校では「伝説の八木」と呼ばれる人物です。「物理学をやりたい、漠然と研究者になれればいいなとは思っていましたが、深くは考えませんでした。数学専攻に進んだ人は数人いましたが、理科は実験するというハードルが高かった」と振り返りました。
 柳楽記者は「全盲の方が物理学を学んだというのは、八木さんが日本で初めてです。東京工業大学では、受け入れが難しいと言われ、ICUでも受け入れ可能かどうかの議論があり、最後は学部長が決断したと、取材で聞きました」と述べました。
 元村さんの「子どもたちから教えられることはありますか」の問いに、武井さんは「毎回ですね。毎年同じようにしていますが、常に新しい発見があります。生徒の発見を見て発見している。3学期は全身骨格を見ます。おなかのところに肋骨がなく空間になっていることを生徒がうまく表現したことに、すごいなと思い、感動しました」と答えました。
 柳楽記者は「骨を触ったとき、すごく面白い授業だと思いました。どう原稿化すればよいのか分からず、悩みました。最初はこの授業を視覚障がいのある人が学ぶという枠でしか考えなかった。だから、授業のよいところを見つけられていなかった。それに気づいて、枠を外して、そもそも学ぶとは何かを見ようと思ったときに、授業の本質に近づけたと思います。視覚障がいのある女性が『障がいは個性だと言いますが、この学び方は文化だと思います』と言われました。文化と言えば、皆で共有できる感じがあります。確かに、この授業はひとつの文化の形だなと思いました」と語りました。
 この後、質疑応答をしました。
 課題について、武井さんは「骨の標本は触るので壊れるのです。レプリカではだめです。同じ大きさでも重い動物と軽い動物がいます。小さな穴が空いているのは神経や血管の穴です。そのときに、息を吹き入れると、つながっている。レプリカでは埋まってしまうのです。五感を使わないと分からないから、本物でないとならない。しかし、お金がないのです。次の人に渡すことも課題です。マニュアルではできない、あうんのやり取りを次の人に引き継いでいかなければならないと思っています」と答えました。
小学5年生の女子児童からの「どのような学びをすればよいですか」の質問に、武井さんは「大阪の国立民俗学博物館に全盲の学芸員の方がいて、『健常者』ではなく、『見常者』に字を変えました。『僕らは触常者』だと言っています。触常者をまねしてやってみる。触る、匂いをかぐ。植物の葉をもんでみると、匂いは微妙に違います。五感、いろいろな感覚を使って、観察すると、たくさんの発見があり、生活が豊かになると思います」とアドバイスしました。



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