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人はなぜ宇宙を目指すのか~アポロ月面着陸50年を機に考える

開催日:3月18日(月)18:30~20:00 イベントのカテゴリー:一般公募イベント

毎日メディアカフェのセミナー「人はなぜ宇宙を目指すのか~アポロ月面着陸50年を機に考える」が3月18日に開催されました。
 米国のアポロ11号による人類初の月面着陸から今年はちょうど50年。そんな節目の年に、「なぜ人は宇宙を目指すのか」という素朴な疑問について、科学政策論や生命倫理問題の専門家である橳島次郎さんとともに考えようという企画です。
 橳島さんは1960年生まれ。東京大大学院社会学研究科博士課程修了。三菱化学生命科学研究所室長、科学技術文明研究所主任研究員などを経て、現在は生命倫理政策研究会共同代表、NPO法人市民科学研究室特任研究員。「生命の研究はどこまで自由か~科学者との対話から」「これからの死に方~葬送はどこまで自由か」など多数の著書があります。大のSFファンでもある橳島さんは「人類が宇宙へ広がる未来は1960年代の幻想にすぎなかったのか、それともスケジュールが少々遅れているだけなのか」と考え、「もしも宇宙に行くのなら 人間の未来のための思考実験」(岩波書店)を昨年秋に出版しました。
 橳島さんは「文化系の学問をしていたのですが、三菱化学生命科学研究所で、生命科学と社会の関係についての話を研究することになり、実験研究者の傍らで過ごしていました。研究所を離れた後、仲間と生命倫理政策研究会を作りました。NPO法人市民科学研究室にも所属しています。橳島という名字は群馬県前橋市に地名があります。メールで文字化けすることがあります」と自己紹介しました。
 「人はなぜ宇宙を目指すのか、あるいは、なぜ目指さないのか?」と題した講演では、はじめに問題意識を語りました。「1969年夏、アポロ宇宙船が月面に着陸しました。私は当時小学生でしたが、その様子をテレビで見ていました。今年は50周年ですが、アポロ計画の後、人類は、地球の空の上のほうにしか行けていない。国際宇宙ステーション(ISS)は地上約400kmにあります。通ることが分かっていれば、地上から見えます。宇宙というよりも地上です。海の中はもっと行けていない。最深11kmですが、人間は誰もいない。そちらにも進出していない。どうしてだろうと思います。この50年に激変したのは、電脳空間です。電脳空間という『宇宙』にエネルギーが向かったせいで、宇宙に向かわない。失われた50年だと思います。月面着陸50周年を機に、人類と地球と宇宙の未来をあらためて考えようということです」
 続いて本題に入りました。最初に示したテーマは「地球は人類のゆりかごか墓場か」です。「人類には、地球を出て星々に広がっていく未来があると思いますか。それとも人類は、この先永遠に地球に留まって、そこで死に絶える未来が描けますか。人類は地球に骨を埋める覚悟ができているのか。私はゆりかごというキーワードを大切にしています。ロシアのK・E・ツィオルコフスキーは1929年ごろに、『地球は人類のゆりかごだ。だが、ゆりかごに永遠に留まることはできない』と言ったとされます。彼はロケットの推進原理を示した科学者です。彼は人類が宇宙に出て行くのを当然だと思っていました。この言葉の、本当の意味をきちんと受け取りたい。ゆりかごの逆は墓場です。ラッセル・シュワイカート(アポロ9号搭乗)は1981年ごろ、立花隆氏のインタビューに、『人間がエネルギーと資源を浪費し、環境を害し、互いに殺し合うという愚行をいつまでも続けていれば、人類の持つ最大の可能性である宇宙への進出を不可能にしてしまう』と答えています(立花隆『宇宙からの帰還』より)。墓場のイメージをもう一つ挙げましょう。『恐竜が絶滅したのは、宇宙開発をしなかったからだ。人類が絶滅するとしたら、それは適切な宇宙開発をしなかったからだ』と言った人がいます。比喩としてはよく分かります。適切な宇宙開発は何かということを考えてみたい。地質年代というのがあります。恐竜がいた白亜紀などです。今は完新世です。人間が地質に影響を与えているので、『人新世』という地質年代を採用しようという意見があります。人類の理性が試される時代、という意味でもあるのではないかと思います」
 「V・I・ヴェルナツキー(1863-1945)は1930年ごろに、『人間による地球生物圏の変容は、まだ理性的なものではなく、略奪的、蕩尽的である』『いま生きている人々の一時的な快適さを作り出すためだけに行われるような科学と技術の研究は、最高の善ではない』という言葉を残しています。ほとんどの科学技術はこのレベルではないかとも思います。ツィオルコフスキーの『地球は人類のゆりかごだ』とされる名言は、実は『地球は理性のゆりかごだ』という言い方をしています。ゆりかごから出て行こうというのは人類ではなく理性なのです。理性を持った存在としてゆりかごから出て行こうというのが彼の考えです。子どものころからの夢で出て行ってはいけないと思います」
 「宇宙と人間の未来についていちばん考えたいこと」として、橳島さんは次のように話しました。「人類は、進化の結果得た知性を、何のために、どう使うか、という問題です。地球での永住と宇宙への進出は、二者択一ではなく、人類の存続のための両輪ではないかと思います。宇宙では、地球上とは違い、徹底的なリサイクル、熱量などの管理をしないと生きていけない。地球上ではついつい甘えてしまいます。宇宙開発の技術は地球での永住にも役立ちますし、持続可能性を考える際にもフィードバックされます。ゆりかごを出て行くということは、理性の成熟=大人になるということです。今はこんなことを続けられないと分かっているのに、甘えているのです。親(地球)への甘えをなくし、本当の親(地球)孝行ができるようになるためには、一度、親(地球)離れする必要があるのではないか。それが宇宙に出て行く意義だと私は思います。宇宙に出て行くのは、地球の資源が枯渇してしまうから、とよく言われますが、それでは遅い。生存拠点をつくるには時間がかかります。そうした資源の枯渇を招くような非理性的な愚行をやめるために、理性を最大限に発揮できる未知の広大な場である宇宙に人間は出て行くべきです」
 ロシアのN・Ph・フョードロフ(1829-1903)は図書館の司書だったとされる人物です。「フョードロフは19世紀に『宇宙という無限の領域だけが、 人間のすべてのエネルギーを浪費から救う』と書いています。宇宙に出て行く意義とは何か。立花隆さんのインタビューで、何人かの宇宙飛行士が『海中から地上に進出した生物の進化の延長として、地球上から宇宙に出て行くのが進化の次のステップ』との考えを述べています。進化生物学者の長谷川眞理子さんに尋ねたら、『地球の生物の進化は地球で完結している』と言われました。宇宙進出は、生物の進化の必然ではなく、人間が選びとるべきことです。理性の成熟、文明の進化のワンステップとして考えるべきです。宇宙進出についての議論の多くは技術論です。可能性、安全性、コストについての議論です。それだけではなく、知性を何のためにどう使うかという文明論としても考え、どうするか決めていくべきだと思います。これは生命倫理の議論も同じです」
 続いて、「宇宙に出て行く未来のための思考実験」を論じました。「このままでは人類は宇宙に行けない。1960年に人体を宇宙で生きられるように改造するという発想が出されました。外呼吸をしなくてすむ人体改造です。サイボーグという言葉が初めて使われました。今の流行りのゲノム編集も使えるかもしれません。ISSに長期間いると、遺伝子が変わるそうです。人工知能・ロボットの助けを借りることも考えられます。すると、『2001年宇宙の旅』のように、人工知能に反乱される可能性があります。人工知能の反乱への基本的な恐怖感は西洋人に強くて、日本人は薄いように思います。抵抗感が薄いから『鉄腕アトム』などが出てくる。米国の女性科学ライターが『日本人が宇宙に向いている』と著書に書いています。平均して体格が小さいから有利だし、周りに合わせるように教育されているから閉鎖空間で閉じ込められることに向いているというのです。私はそれよりも日本人のロボットへの恐怖感、抵抗感のなさが大きいと思います。人類が宇宙に行くと、宇宙人という別の種に進化するというアニメもあります。イカの格好になります。どこまで変わったら人でなくなるか。では、精神が大事なのか。精神だけの存在になればいいが、それは人類にとってよいことなのか。エイリアンに会ったらどうするという問題もあります。いるかどうか分からないのですが、戦争になったらどうするのか。宇宙船は武装するのかしないのか。相手がどれだけ強いのか分からないから準備のしようがない。私は理解不能の存在に出会う意義はあると思います。深い内省の機会になる。自分がどういう存在なのかが分かるといいなと思います」
 この後、質疑応答、ディスカッションをしました。宇宙航空研究開発機構 (JAXA)とトヨタ自動車が有人月面探査車の開発に乗り出したことについて、「無人かと思ったら、有人探査車なので驚きました。しかし、それを月に運ぶ手段を持っていません。JAXAがどこまで本気かは分かりません。この50年間、有人技術が進まなかったので、体力、知力が優れた人しか行けない。宇宙は誰でも行けなければならないし、誰でも行ける技術になってほしい」と述べました。太陽系外惑星への進出については、「系外惑星に行くには、何世代も生きていかなければならない。好きなSF作家がそれを題材にしています。地球を出る世代と目指す惑星に到着する世代の真ん中の世代は地球を知らないし、目指す先にも行けない。その状況に置かれた人間がどうなるかを描いています」と話しました。最後に、「自分が宇宙に行けるかどうかは別として、人類が地球にとどまっているのは、つまらないと思っています」と宇宙進出への期待を語りました。



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