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元村有希子のサイエンスカフェ「巨大科学とどう向き合う? 岐路に立つILC」

開催日:1月28日(月)18:30~20:00 イベントのカテゴリー:ScienceCafe

元村有希子のサイエンスカフェ「巨大科学とどう向き合う? 岐路に立つILC」が1月28日、毎日メディアカフェで開催されました。
 元村有希子・毎日新聞科学環境部長が科学の専門家に聞く人気シリーズです。この日のゲストは東京大学素粒子物理国際研究センターの山下了・特任教授。次世代加速器「国際リニアコライダー(ILC)」建設計画を進める研究者の一人です。物理学者たちが岩手・宮城にまたがる北上山地への誘致を求めているILCについて、日本学術会議は12月、「誘致を支持するには至らない」との見解をまとめました。日本に誘致した場合、8000億円に上る建設資金の半額を日本が負担しなければならないことから、期待される科学的成果と負担のバランスについて賛否は分かれています。
 最初に、山下さんがILCの内容や意義、動きを説明しました。山下さんは千葉県生まれ。1989年京都大学理学部物理学科を卒業後、同大学院理学研究科博士課程修了、理学博士。専門は素粒子物理実験。95年からジュネーブのCERN(欧州合同原子核研究所)に約6年滞在して研究。ヒッグス粒子探索グループの総責任者、国際リニアコライダー(ILC)計画の物理研究部門アジアリーダーを歴任しています。
 山下さんは次のように話しました。「ILCはビッグプロジェクトです。ビッグプロジェクトには、宇宙ステーションや世界最大の加速器LHC、核融合のITERなどがあります。国際協力研究でやろうという流れになっています。それには、社会の理解や世界への還元が必要です。国際宇宙ステーションは米国主導で年間約3000億円、日本は400億円を負担しています。LHCは欧州主導で、トンネルなどを含めると1兆円近くかかり、日本も数百億円を負担しています。ITERはフランスに建設中で、当初5000億円とされたコストが増えると言われています。素粒子物理は一番小さなところを研究しますが、それが分かると宇宙のことが分かります。研究は分散型が適するものと、一極集中が必要な研究があります。フロンティア加速器という先端的な加速器はLHCのほか、日本にあるJ-PARK、SUPER-KEBがあります。ILCは人類の新しい知を求めて世界が協力しようとしています。それは自然哲学の研究につながります。波及効果もあります。ワールドワイドウェブ(www)も実は素粒子研究のために開発されました。数千人が20年かけて装置を設計します。データは世界の研究者で共有して分析します。研究者同士の協力であり、競争です。技術は世界の広い分野で利用されます。日本がビッグプロジェクトを主導するのは初めてのことです。宇宙の謎を解決する3方法があります。宇宙に行く、宇宙を観る、そして宇宙の始まりを創る。私たちは加速器により宇宙誕生の直後を再現しようとしています。素粒子の大統一理論の構築です。すでに、宇宙が始まって数千万分の1秒までが分かりました。さらに、ILCで、1兆分の1秒まで再現する。陽子をぶつける方式のLHCは加速しやすいが、素粒子ではありません。ILCは素粒子同士である電子と陽電子を衝突させます。新しい素粒子が生まれるのを直接観測できて、その性質を調べると法則が分かります」
 「モデルはCERNです。CERNでの研究はたいへんですが、研究に没頭できます。研究者同士の競争が激しく、日本人の人数は7%ですが、重要な成果にかかわっています。基礎科学限定で、パテントはオープンにしています。今はパテントを取るのが普通ですが、CERNは条約で決まっていて、それができません。加速器は1周27km。センサーは7階建てビルと同じ高さがあります。Science for Peaceを掲げ、各国からの1万人の研究者がいます。国連がオブザーバーステータスを与えるほどで、平和の象徴、科学の象徴です」
 「円型加速器は出せる速度が決まっています。それ以上の速度にするには、リニア加速器が必要です。ILCは準備段階で48 カ国、400団体が参加しています。北上山地を候補地にしました。運営費は年間350~400億円で、国際宇宙ステーションの負担と同規模です。科学技術予算の増加がないと難しいことは確かですが、圧倒的な将来性があると思います。50年前に確立された素粒子の標準理論が間違っていることは分かっています。ところが、どこが間違っているかが分からない。超対称性、重力を含めた大統一理論、空間3次元と時間1次元ではない隠れた次元があるかもしれない、素粒子にもっと下の階層があるかもしれないといったことが研究できます。ヒッグス粒子の研究により、超対称性を発見する、暗黒物質を発見することが可能かもしれないのが、リニアコライダーのすごいところです。最終的にはビッグバン解明まで目指す。これは40年先の夢です」
 続いて、山下さんへの質問です。元村さんは「ILCは加速器業界のF1ですね。学術会議は厳しめの評価をしています。平たく言うと、ビッグサイエンスを否定しないが、効果と費用の投下のバランスが悪いと言っています」と質問すると、「経済波及効果を考えないといけないということです。日本はこれを弾く(計算する)のが苦手な国です。過去の事例を持ってきて数字を出すことはできても、新しいことの効果は弾けない。消費効果は出せても、人類に与える影響、若い世代に与える影響は正確に弾けません」と答えました。
 「海外につくって日本が協力する妥協案はありますか」との元村さんの問いには、「国際宇宙ステーションもITERもそうです。研究者にとっては、どこにつくっても同じです。そこで研究すればよい。しかし、日本人として、これをつくることで日本が変わるきっかけになるかもしれないと思っています。CERNは地元の人たちが愛しています。つくば研究都市との違いを感じます。ILCができると、若者、子どもたちにすごい影響があると思います。技術の一部を握ることでホスト国は得をします。小柴昌俊先生の表現を借りると『ちょっと気持ちが良くなる』ということです」と述べました。
 会場からの質問、意見も相次ぎました。「当初の8000億円から4000億円に減額したが、実際には1兆円、2兆円になる心配がある。バックグラウンドノイズがあるから、新しい発見は難しいのではないか。核廃棄物処理の施設になるといううわさがあります。危険性はないのか」との質問には、「核廃棄物処理の施設になるというのは誤解です。トンネルを掘るから連想されたのでしょうが、地下100mといっても、標高百数十mのところの地下ですから、核廃棄物処分をするのは原理的に無理です。当初長さ30kmで設計しましたが、ヒッグス粒子が発見されて、20kmで建設できることが分かり、減額しました。直線型なら必要なときに延ばすことができます。バックグラウンドノイズは陽子型での話で、リニアは1個ずつ衝突するので、バックグラウンドはないです。放射線は危険です。ビームダンプというビームを捨てる場所があります。そこは放射化しますから、そこに人が立ち入ると危険ですから、きちんと管理します。素粒子研究はその管理をずっとやってきた分野です。リニアでは、放射線は陽子型の100分の1です。安全であるとは思っていますが、それが人々の安心までいくにはまだ課題があると思っています」と答えました。
 誘致合戦についての質問には、「かつてアメリカ、ドイツが誘致しようとがんばっていました。LHCは2035年まで使わなければならないので、欧州がつくるには早くても2040年になる。中国は加速技術を持っていない。ナノメートルで当てる技術がない。日本はどちらも持っています。日本だけがナノメートルレベルで、びしっと当てる技術があります。米国はSSC計画をクリントン政権が途中で止めたことで、国際信用がなくなりました。国際協力できると証明しないとホストになれない。アメリカは中国につくられないよう、日本に協力しています」と話しました。
北上山地に建設することについて、山下さんは「科学であり、地方創生であり、復興にもつながると考えています。尊敬や誇りも含めた大きな価値観で初めて認められるものだと思います」と述べました。
 会場からは「原発事故前は、原発の安全神話にずっぽりはまっていました。巨大技術に対して、安全性、始末ができるのかどうかを考えないといけないと思います。巨大技術はなかなか止められないので、慎重に考えていただきたい。国民の税金をどこに使うか、合意形成が必要だと思います。慎重に進めていただきたいと思います」との意見も出され、山下さんは「その通りだと思います。説明が尽くされていないことは分かっています。安心していただくにはどうしたらよいのかを迷っています。科学自身がまずいのではないか、人間を傷つけるものになるではないかという反省が出ています。素粒子分野はそうしたことからは遠いと思っていましたが。科学は人間を助ける方向にも、傷つける方向にもなります。安全な設計と安心できるかどうかは別だと思っています」と同意しました。
 学術会議の慎重意見を踏まえ、今後はどんな展開になるのでしょうか。かぎは3月7日に日本で開催される世界の加速器研究所長の会合です。山下さんは「そこで、日本が誘致すると言えないことははっきりしています。これまでは設計予算の段階、次は協議に入りましょうという段階です。そこに行けるかどうかがポイントです。日本政府として何もしないのか、それとも協議を始めるという小さな一歩でも踏み出すのかです。世界の加速研究所の所長は一致団結してサポートしてくれていますが、日本がリーダーになって国際研究所をつくったことはなく、日本のリーダーシップには懐疑的です。素粒子研究はわくわくする研究です。日本に建設することで、日本の科学や社会が変わるかもしれない。実現に向けてがんばります」と決意を表明しました。



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