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修復家だけが知るストラディヴァリウスの真価

開催日:10月5日(金)18:30~20:00 イベントのカテゴリー:一般公募イベント

バイオリンの製作や修復で世界的に知られる中澤宗幸さん(67)の新著「修復家だけが知るストラディヴァリウスの真価」(毎日新聞出版)が刊行され、記念のトークイベントが10月5日、東京都千代田区一ツ橋1の毎日新聞東京本社1階「毎日メディアカフェ」でありました。芸術的な曲線美を持つストラディバリウスについて、職人の視点から魅力を語りました。
 中澤さんは、兵庫県出身。山林業を営んでいた父はクラシック音楽が好きで、当時のSPレコードを蓄音機にかけ、ベートーベンやモーツアルトの曲を子どもたちに聴かせていた、といいます。「父自身も趣味でバイオリンを弾いていましたが、手先が器用だったので自己流でバイオリンを製作していたんですね」。その影響で中澤さんも8歳のときから父に習ってバイオリンをつくるようになりました。
 「親父(おやじ)の教えは『欲しいものがあれば最高のものを持ちなさい』。私は本物を見たいという思いで、高校を卒業後、ヨーロッパにバイオリンの製作を学びに行きました」
 英オックスフォードに工房を持つ修復家を訪ね、住み込みで学ぶことになりました。初めは工房の掃除や雑用に追われる毎日でしたが、2年ほどしたある日、師匠が机の上に図面を広げながら言いました。「1717年のストラディバリウスから写し取ったものだ。これを見ながら自分でつくってみなさい」。本格的なバイオリン製作のスタートです。試行錯誤を重ね、ようやく3カ月後に出来上がった1号機。それを自ら弾いてみた師匠は、「つくり手の熱意が込められている」と評価してくれました。
 その後も、欧州と日本を往復する暮らしを続け、1980年、東京に自身の工房を構えます。以後も、たびたび海を渡ってドイツやイタリアの職人らから手ほどきを受け、製作や修復の技術を磨くことに専念。「初めは閑古鳥が鳴いていた工房にも次第にお客さんが来てくれるようになった。特に来日公演でやってきたオーケストラのメンバーらが多く訪れてくれました」
 そんな中澤さんが魅了されたストラディバリウス。その真価はどこにあるのでしょう。まずは楽器の歴史をひもときます。
 バイオリンは1500年代半ばごろ、北イタリアで誕生したといわれています。生みの親について諸説ありますが、北イタリアのクレモナ市の調査によると、現在ではアンドレア・アマティが有力視されています。アマティはクレモナで活動し、当時、流行していたリュートから弦楽器の製作を始めました。
 アマティが完成させたバイオリンは、瞬く間にヨーロッパで評判に。彼の技術は子孫に受け継がれ、なかでも孫のニコロはアマティ一族で最も優秀な職人でした。そのニコロに弟子入りしたのが、アントニオ・ストラディバリ、すなわちストラディバリウスの作者です。
 「ストラディバリは弟子時代はアマティのやり方を踏襲し、その影響を受けつつ独自の作風を完成させていった。アマティの甘い音色に豊潤な力強さが加わったのがストラディバリウス」と説明します。ちなみに中澤さんは、ニコロとストラディバリを比べてみたとき、音色だけはもとより、つくり手としての情熱や完璧さを求めてやまない姿勢などの共通点があり「彼らは親子だったのではないか」という仮設を立て、想像をめぐらせているそうです。
 ストラディバリは、ビオラやチェロ、ギターなどを含めると3000挺(ちょう)以上の楽器を生み出し、戦争や火事、乾燥や破損、盗難などで現存するのは600ほどだと推測されます。
 中澤さんが初めてストラディバリウスを目にしたのは約半世紀前。オックスフォードのアシュモリアン美術館で、最高傑作といわれる「メシア」をガラスケースごしに見たとき、「生き生きとした木の目や、ニスを塗った直後のような、ぬれた肌に引きつけられた」と振り返ります。以後も、ストラディバリウスと対面するたびに、初めて出合ったときの胸の高まりがよみがえってきます。
 コンピューターなど科学技術が発達した現代において、300年前の楽器が再現できないのはなぜでしょうか。
 「一つは素材である木」と指摘します。「昔の材木は、木目(もくめ)が裁断されていなかった。機械を使用するいまの林業は、いかに効率よく伐採するかを重視している。職人の立場で言えば、木とどれだけ深く『対話』ができるかによって違ってくる」。軟らかさや固さなど木の特徴をつかみ、どの状態であれば最もよい音が出るかなど、経験と感覚が出来映えに反映されるのです。ただし、形状だけで楽器の善しあしが決まるわけではありません。「この楽器の持つ音楽の表現力は、演奏者によって引き出される」と中澤さん。
 どんな奏法や個性に反応するかは、弾きこなしてみなければ分かりません。「奏者と楽器が互いに呼応することでその人の、ストラディバリウスならではの表現が音色となって現れる」。超絶技巧奏者のパガニーニやサラサーテをはじめ、イブリー・ギトリス氏やギュンター・ピヒラー氏など現代の名演奏家まで、時代を超えて弾き手の魂をとらえてきた理由がそこにある、と中澤さんはみています。
 現代の世界三大名器は、ストラディバリウス、ニコロ・アマティ、グァルネリ・デル・ジェスといわれています(グァルネリ・デル・ジェスはニコロの弟子だったアンドレア・グァルネリの孫が作者)。
 今回、ストラディバリウスに特化した書籍を刊行するにあたり過去の文献などを調べた中澤さんは、「これらの先人たちがいかに命の宿る小さな箱をつくることに情熱を傾けてきたか」をしみじみと感じました。自身が打ち込む修復という仕事も「揺らぎや妥協があってはならない」と言います。そしてこの本を通じ「音楽の素晴らしさをみなさんに知ってもらいたい」と強調しました。
 なお、中澤さんが企画に関わった「ストラディヴァリウス300年目のキセキ展」が東京都港区六本木6の森アーツセンターギャラリーで10月9日から開催(15日まで)。国内外から21艇のストラディバリウスが集められ、東京で展示する企画です。メディアカフェでのトークでは、その中の一つの名器が披露されました。【明珍美紀】



 ※「ストラディヴァリウス300年目のキセキ展」(東京ストラディバリウスフェスティバル2018実行委員会主催)では期間中、展示されたストラディバリウスを演奏家が奏でるミニライブやトークがあります。中澤さんの妻でバイオリニストの中澤きみ子さん(10日)や宮本笑里さん(12日)らが生の音色を届けます。
https://tsf2018.com


ストラディバリウスで演奏する妻でバイオリニストの中澤きみ子さん(右)



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