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英国・認知症ケア最前線-ヒューゴ博士に聞く

開催日:7月26日(木)28:30~20:30 イベントのカテゴリー:一般公募イベント

認知症予防財団と毎日メディアカフェの協力イベント「英国・認知症ケア最前線-ヒューゴ博士に聞く」が7月26日、毎日ホールで開かれました。
 今夏、認知症をテーマとしたドキュメンタリー映画「毎日がアルツハイマー」シリーズの最終章「毎日がアルツハイマー ファイナル」(関口祐加監督)の公開を記念し、この映画に出演している英国ハマートンコート認知症ケア・アカデミー施設長のヒューゴ・デ・ウアール博士が来日しました。そこで、認知症予防財団と毎日新聞社が、ヒューゴ博士の来日記念シンポジウムを企画しました。
 英国は2013年、日本の厚生労働相などG8の担当者や世界保健機関などの関係者を招いた認知症サミットを開催し、認知症対策の国際的連携を呼びかけています。英国は認知症対策の国家戦略を定めるなど、認知症対策先進国と言えます。認知症ケアの国家基準として定められているのが「パーソン・センタード・ケア(PCC)」です。アルツハイマーか脳血管性障害かという認知症の原因疾患だけでなく、健康状態や個人史、性格、人間関係など社会心理学的要因にまで踏み込んで、患者の視点や立場を理解して適切なケアを提供しようという手法です。ヒューゴ博士はPCC実践の第一人者として知られています。
 シンポジウムは2部構成。第1部はヒューゴ博士の講演です。(博士はウアール博士と表記するのが普通ですが、関口監督が親しみを込めて、ヒューゴ博士と呼んでいるため、ここでもヒューゴ博士としています)
 第2部はヒューゴ博士と吉田啓志・認知症予防財団事務局長、元村有希子・毎日新聞科学環境部長によるトークセッションです。
 第1部の講演で、英国ハマートンコート認知症ケア・アカデミー施設長であるヒューゴ博士は関口監督の映画に出演した経緯を話した後、英国の認知症治療の現状やケア・アカデミーについて話しました。「病院には2病棟があり、男性病棟と女性病棟に分かれていました。病床は44床。建物が古く、100年ほどの歴史がありました。健康状態の悪い人を受け入れるのはどうかと思うほどです。2009年、新施設建設の動きがありました。保健省は病院独自の資金でやってくださいということでした。1800万ポンド(二十数億円)の資金がありました。最先端のカスタムメードの病棟をつくることにしました。3病棟、39床です。新しい病棟になると何が変わるのか。それまで入院患者が平均4年いました。寿命が終わるまで、入院していたのです。新しく入るには、誰かが亡くなるまで待たなければならないという問題がありました。そこで、病院で症状が安定したら、外の施設で診てもらうようにしました。そのために、集中的プログラムをつくりました。アウトリーチをして現場のケアホームで情報を提供するという支援をしました。数週間、数ヶ月かけて退院へのプログラムをつくります。平均入院期間は4~6カ月になりました。戻ってくる人もいますが、それは5%、20人に1人です。認知症ケア・アカデミーは、介護の現場を見て、経験して知ってもらう学びの場の提供になっています」
 パーソン・センタード・ケア(PCC)はどんな考え方に基づくのでしょうか。「かつては、患者を管理していくという考えで対応がされていました。画一的な扱いではなく、その人らしさに着目しながら、文化を変えていく。その延長線上に今の活動があります。認知症の患者さんには、怖がっている人がいます。自分の人生が指の間から崩れ落ちてしまうという恐れを抱いています。それを薬で抑えようとしても解決にならない。不安感に寄り添うことで、どうするかという会話が成り立ちます。人の頭の中を理解することは難しい。知らない人に対処するのはさらに難しい。そこで、できるだけ個人を知る努力をします。家族、親類から聞き取りを重点的にします。ライフストーリーに耳を傾けます。馬のひずめの職人がいました。あまり友人がいない人でした。病院にある小屋で、ハンマーを持たせてみたら、1週間で状態が改善されました。退院後、田舎の施設に移り、元気に暮らしていると聞きます。想像力を働かせることによって、その人の人生がどうだったのか、人生の中心的なものを体験させられないかと考えます。リスクについて話します。認知症の人は徘徊することがあります。調理器具などを扱っていて危険です。かつてはリスクが排除される方向でした。いすの上で座っているのが最も危険がない。しかし、ポジティブリスクシンキングの見地から、リスクを軽減してやらせてあげることをしています。これは人の尊厳にとって重要なことです」
 ヒューゴ博士は「ミュージックミラーズ」というツールも紹介しました。「音楽は脳の活性化をうながします。脳全体が活性化します。脳の一部がだめになったとしても、音楽で刺激することができる。小さなエピソードと、それにひもついた音楽があります。親類の人が結婚式の時に歌ってくれたというフランク・シナトラの曲をかけながら、話しかけていく。患者さんの顔が輝いてきます。つくるのは簡単で、マニュアルもあります」
 最後に、博士は「医学的には認知症の診断がかかせません。それなしには、家族が大事な人に何が起きているかが分からない。認知症と診断されなければ受けられないサービスもあります。診断されて、そこで終わるのではない。患者さんが残りの人生をどう生きていくのか、周囲の人とどうかかわっていくかが重要です。患者さんのニーズは病気によって決まるのではない。ニーズを知るには、その人がどんな人であるのかを知ることが必要です。私たちはその人自身を知ろうと努力しています」とまとめました。
 第2部に移りました。元村さんが進行役を務めました。
 まず、吉田事務局長が話しました。「日本ではケアで認知症が改善するというのはかつて考えられなかった。現在は先進的な取り組みがされているところもありますが、施設ごとの格差が大きいと思います。介護の問題の一つとして、人とお金がないことがあります。介護職はきついのに、給料が安いということで、なり手が少ない。建物ができているのに稼働できない施設もあります。人手不足により、ケアをしている人に余裕がなくなる。最大の課題はケアをできる人を育てることです。政府も認識していて、処遇改善に取り組んではいますが、ほかの職業に比べて平均給与は少ない。高齢化が進むので、人手不足はさらに深刻化するでしょう。認知症に対する偏見も残っています。身内の人が認知症だと知られたくないという人が50%いるという調査もあります」
 この点について、元村さんはヒューゴ博士に施設の職員数、待遇を尋ねました。ヒューゴ博士は「39病床で職員は120人。常時いるのではなく、パートタイムの人もいます。年収で最も専門性の高いスタッフで年収6万ポンドが3人います」と答えました。
 吉田事務局長は続いて、「家族介護は難しくなっています。独り暮らしが増え、全世帯の35%になっています。介護のために仕事をやめる介護離職が年間10万件とも言われます。東京23区内で孤独死が年間3000人もいます。実際の症状と介護認定のずれという問題があります。体は元気で、入浴や歯磨きができるということで、低い認定になる。判定を受けるときにシャキッとする例もあります」と話しました。
 元村さんは家族への支援について、ヒューゴ博士に尋ねました。博士は「英国ではさまざまな制度があります。家族介護者には介護者アセスメントを自治体が提供しなければならない。必要なサポートが得られているかなどを尋ねます。介護者の心理的なニーズにも光が当てられます。介護者だけを集めて、思っていることを話してもらうこともします。介護者が一番よいソリューションを提案することが多い。最も患者にとってよい対応を考える会議もあります。自治体が招集します。家族内で意見が対立することもありますが、患者の利益になるように意見を集約します。議長、副議長がリードします。結論には法的拘束力があります。病院でこの会議を開くこともあります。家族介護者への支援は絶対に必要なことです」と答えました。
 吉田事務局長は、フランスが4種類の認知症治療薬を保険対象から外したことを懸念しました。これについて、ヒューゴ博士は「フランスは医療費がGDPの12.5%を占め、医療制度が破綻に近いと言われていました。そこで、標的を決めて、医療費を削減するようにした。その一つが認知症治療薬だということでしょう。英国はコスト分析をした結果、認知症治療薬の効果が認められ、増える方向に行きました。エビデンスがあるからこそです」と指摘しました。
 最後に、元村さんが「お金がない、人がないという、ないない尽くしの状況で、PCCは実現できますか」と問うと、ヒューゴ博士は「最後に、一番難しい質問が来ましたね。レコグニションという言葉があります。認知症は認知力の衰えですが、改めて認識する。認知症の方の隣に寄り添って、人として認識します。価値や尊厳を認めますということです。ないない尽くしかもしれませんが、私たちがきちんと人間的な接し方をすることが必要だと思います」と力説しました。


 


 公益財団法人認知症予防財団
 https://www.mainichi.co.jp/ninchishou/



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