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元村有希子のScienceCafé「地球温暖化に負けない農業」

開催日:7月20日(金)18:30~20:00 イベントのカテゴリー:ScienceCafe

 元村有希子のScienceCafé「地球温暖化に負けない農業」が7月20日、毎日メディアカフェで開かれました。
 元村有希子・毎日新聞科学環境部長が科学者をゲストに迎え、話を聞く連続企画。今回のゲストは地球温暖化の被害を防ぎ、軽減しようとする「適応策」の研究を進める茨城大額農学部准教授の増冨祐司さんです。毎日新聞はキャンペーン「+2℃の世界」に取り組んでいますが、増冨さんを含む茨城大学の協力を得て展開しています。
 増冨さんは1975年、山口県生まれ。2006年、京都大大学院博士課程単位取得退学。博士(地球環境学)。国立環境研究所地球環境研究センターポスドクフェロー、埼玉県環境科学国際センター研究員などを経て、14年から現職。気候と作物のシミュレーションモデルを用いた環境影響評価、環境政策が専門で、地球温暖化の農業への影響などを研究しています。
 最初に、元村さんが「今年は暑すぎる夏です。農業がどうなるのか心配していて、今回のサイエンスカフェはタイミングが良かったと思っています。毎日新聞は年間企画で『+2℃の世界』を連載しています。今世紀末には地球の平均気温が2℃上昇すると予測されています。暑く、西日本豪雨で水害が起こっているのをみると、温暖化の影響による災害は明日にでも起こると感じざるをえません。本日のゲストの増冨さんには、連載にご協力いただいています。増冨さんはアロハにビーサン姿で、暑さに適応していると感じました(笑い)」と、増冨さんを紹介しました。
 増冨さんはまず、自己紹介をしました。「山口県岩国市出身です。山奥の家で生まれましたが、今回の豪雨で家はつぶれてしまいました。アインシュタインに憧れて、大阪大学理学部物理学科に入りましたが、夢破れて環境学へ変更しました。好きなものはスポーツ、音楽、ビール。嫌いなものは、形式的なもの、たてまえです。やわらかく生きたいと思っています」
 続いて本題に入りました。「研究者は最新のことを知りたい、知ったことを皆さんに伝えたいと思っています。今日は最新のことを皆さんに話します。話の狙いは、温暖化の現状を知ってもらう、適応について知ってもらう、農作物への影響と対策について知ってもらう――ということです。温暖化の現状と将来予測、気候変動の適応とは何か、農作物の対策について話します」
 第1のテーマは「温暖化の現状と将来予測」です。「気温上昇は疑いえません。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第5次報告書では、この100年間で地球の平均気温は0.64℃上昇したと推定しています。日本の最高気温記録の上位は過去30年に集中しています。2013年8月12日高知県(江川崎)41.0が最高です。1時間50mm以上の強い雨の年間発生回数は増えています。温暖化のせいで強い雨の頻度が増加しています。ただし、今回の西日本豪雨が温暖化のせいであるとは言えない。温暖化していなくても豪雨の可能性があります。温暖化のせいと言うには、温暖化していない場合は今回のような豪雨がほぼありえないことを示さなければなしませんが、これは非常に難しい」
 ここで、元村さんは「断言する科学者は信用しないというのが私のポリシーです」と持論を述べました。
 増冨さんは国立環境研究所や大学の気候変動研究者が構成する「MIROC」の気候変動予測シミュレーションを示しました。気温が上昇している地域は赤く表示されますが、21世紀後半には、ほとんど地球全体が赤くなっています。「温室効果ガスをたくさん出し続ける最悪シナリオでは、2100年には4℃の上昇になると予測されています。こうはならない世界を選択する可能性は十分あり、1℃でとどまる可能性もあります。1~4℃上がるということですが、2℃以内の上昇にとどめるというのは、むちゃくちゃがんばってようやく達成できることです。では、日本ではどうなるか。北の方が温度上昇が大きいと予測されています。どの地域でも強い雨は増えます。+2℃はどれぐらい暑いかを考えてみましょう。東京の日平均気温の季節変化は真冬の5℃から真夏の28℃までです。日平均気温が約23℃以上の日を夏、約9℃以下の日を冬としてみます。現在は夏冬とも年間92日です。ところが、平均気温が2℃上がると、夏は124日に増え、冬は56日に減ります。温暖化は日本人の季節感を変える大事件だと思ってください。人間は温暖化による影響からある程度は逃げられても、植物は逃げられません」
 次のテーマは「適応」です。今年6月、地球温暖化に伴う農作物被害や気象災害を軽減するため、環境変化に合わせる対策を 推進する「気候変動適応法」が制定されました。制定には、適応策研究の第一人者である茨城大学の三村信男学長が尽力しました。
 「緩和策と適応策の二つの温暖化対策があります。緩和策は温室効果ガスを減らす予防策、適応策は表れた現象を軽減する対処策です。風邪を引かないようにするのと、風邪を引いた後に薬を飲むのとの違いです。近年は適応策が注目されています。適応策がなぜ必要か。すでに気温は上がり、影響が表れているし、今すぐに温室効果ガス排出をゼロにしても、しばらくは気温上昇が止まらないからです。適応策のポイントは地域が主役であることです。その地域ごとに適応策を考える必要がある。影響が出るタイミングや強度は地域によって異なります。緩和策は国際合意が必要で難航しますが、適応策は地域ごとに決められるので実行しやすい。緩和策は効果が得られるまでに時間がかかりますが、適応策は比較的すぐに効果が得られるという違いもあります」
 「2015年のパリ協定は京都議定書(1997年)に代わる国際合意で、2016年に発効しました。気温上昇を2℃以内に抑えることを目指していますが、適応についても、目標を立て、それに向けて計画を立て、実施し、定期的に報告書を出すことを定めています。気候変動適応法では、適応の総合的推進、情報基盤の整備、地域での適応強化、適応の国際展開を定めています。地球はすでに風邪の引き始めですから、対処索(適応策)が必要です」
 第3のテーマは「農作物への影響と対策」です。「気温が上昇すると作物はどうなるか。高温によって米粒が白濁化することが分かっています。栄養が行くときに高い温度にさらされるとそうなります。白未熟粒と言いますが、美味しくなく、等級が下がります。7月末から8月上旬に高温だと白未熟粒が発生しやすいとされています」
 増冨さんは埼玉県環境科学国際センター研究員だった2010年、埼玉県産米「彩のかがやき」で大量の白未熟粒が発生するという出来事を体験しました。
 「リンゴ、ブドウ、ミカンは気温が高いと色づきが悪くなります。価格が低下し、農家が困ります。長野県のリンゴで、色づきの悪い『日焼け果』が出ています。長野県はリンゴ主要産地としては最も南にあり、気温が上がると栽培しにくくなります。リンゴをやめてブドウに変えたという農家があると聞いています。高温は作物にとってよいものではないのですが、どれぐらいひどくなるのか。適切な対策を検討、実施するためには、影響の大きさ、場所、時期を特定する必要があります。影響評価が必要です」
 最後に、自身の最新研究を話しました。「白未熟粒発生に関する最新の影響評価」です。「コンピューターの中で作物を育てます。温度が上がったときにどうなるかを予測します。白未熟粒発生率予測モデルで発生率を予測します」
 この後、興味深い結果が報告されましたが、「これはまだ論文になっていないので、オフレコです」とのこと。米の代表的品種であるコシヒカリについても興味深い研究結果を話しました(ここも内緒です)。
 「適応の一つに、高温耐性品種の導入があります。埼玉県の『彩のきずな』は暑さに強い米で、品質も特Aランクになりました。高温耐性品種の育成は温暖化対策としては決定的な対策です。とはいえ、育種は時間がかかる、偶然にも左右される、普及するかどうかは消費者の意識にもよるという問題があります。農家は売れるものを作ろうとしますから、新しい品種が普及するのは難しい。生産者が実行できて、短期的で効果的な対策はないかということで、JA谷田部の職員、米生産者の方々と共同研究を始めました。これまでの調査で、白未熟粒の発生率が田んぼによって大きく異なることが分かりました。気温や日射量が違わないのに、なぜこんなに差が出るのかを調べています。刑事コロンボに出てくる言葉ですが、手がかりは現場に落ちている。現場で調べて、答えが出たら発表します。効果的な適応策が隠れていると思います」
 最後に、将来の夢を語りました。「近い将来、僕の研究により、谷田部の農家の米には白未熟粒が発生しないという結果を出したい。それが広がり、全国で白未熟粒がなくなる。そうなれば、研究者冥利に尽きます」
 この後、参加者と活発な質疑応答、意見交換をしました。



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