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元村有希子のScience Cafe 「義足エンジニアという仕事」

開催日:3月15日(木)18:30~20:00 イベントのカテゴリー:定期イベント

 元村有希子のScience Cafe「義足エンジニアという仕事」が3月15日、毎日メディアカフェで開かれました。
 元村有希子・毎日新聞科学環境部長が専門家から科学の話題について聞く連続企画で、ゲストは「Xiborg(サイボーグ)」社長の遠藤謙さんです。2001年慶応大機械工学科卒業。05年からマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ、人間の身体能力の解析や下腿義足の開発に従事し、12年博士号を取得しました。ソニーコンピュータサイエンス研究所研究員として、ロボット技術を用いた身体能力の拡張に関する研究や途上国向けの義肢開発に携わってきましたが、14年、競技用義足開発をはじめ、すべての人に動く喜びを提供したいと、Xiborgを起業しました。
 元村さんは「遠藤さんとは10年ほど前に知り合いました。同じ午年です(笑い)」と遠藤さんを紹介しました。
遠藤さんは義足開発のエンジニアになるまでの経過を次のように語りました。「研究をするし、ベンチャーの社長でもありますが、基本的にはエンジニアとして、ものをつくっています。修士2年生までロボットの研究をしていました。ロボットが大好きでした。あるとき、後輩に病気が見つかりました。骨肉腫で足を切断して義足ユーザーになりました。そのときに研究していた二足走行ロボットが人間の足の代わりになるのではないかと思っていたのですが、当事者の前に、このロボットがあるよと胸を張って言える研究をしていないと感じました。同時期に、Hugh Herr(ヒュー・ハー)というMITメディアラボの先生と知り合いました。この先生は凍傷で足を切断しました。彼は有名なロッククライマーでした。義足をつくって競技を続けた結果、足があるときよりもよい記録が出たときもあったそうです。体重が軽くなったとか、これまで届かなかった所に義足が届くようになったとか、岩肌に合わせて形状を変えられるとか、デメリットはもちろんあるのですが、テクノロジーと組み合わせることによってメリットがあると言っていました。僕はその言葉にインスパイアー(刺激)されて、そこで研究したいと思いました。それまで障がい者との接点がそれほどなく、エンジニア、研究者として深入りするつもりはなかったのですが、アメリカに行って、自分の考えが180度変わりました。義足は棒切れにカーボンの板をつけたようなものが多い。普通に歩いているように見えますが、けっこう疲れます。ヒュー・ハーと一緒に歩いていると、彼は汗だくになります。まだ技術的に未熟で、身体の努力に依存していると言えます。メガネの事例があります。テクノロジーとしては視力を上げることです。コンタクトなどを含めると、メガネを使う人はマジョリティーだと思います。視力が悪いという社会的弱者になりうる原因を消しているテクノロジーだと言えます。小学生のときに牛乳瓶の底のようなメガネをかけている子がいて、あだ名が博士でした。今はメガネのデザイン性が高まって、かけていることがコンプレックスにならない状況になっています。メガネは視力を戻すという以上に社会に受け入れられていて、裸眼視力を気にしないで生活できるという素晴らしいものです。義足でふだんと同じ生活ができるようになれば、足を失っても障がい者と呼ばれなくなる日が来るかもしれないと、ヒュー・ハーと話していました。未来のある技術だと思い、どっぷり浸かることになりました。義足は人間の体に近づける以上に、違うこともできると言われています。すごく速く走れるようになったら、足がないことが特殊能力者にあたると考えられるかもしれない。そうなっていないのは、まだまだ技術が未熟であるということで、我々エンジニアが日々研究して、社会的弱者が減るようにしたら、社会変革につながる。それをモチベーションにして研究してきました」
 次に、遠藤さんはチームが何をしているのかを語りました。途上国向け義足の開発です。「インドによく行きました。インドで義足を無料で配っている団体がありますが、安いもので、けがをしてしまうことがある。インドで売られている3000円ぐらいの義足と同じ価格帯で、もう少しよいものをつくるというプロジェクトに取り組んでいます。義足がどれだけ生活にインパクトを与えるのかを僕に改めて勉強させてくれました。インドでは義足が配られるところが限られます。配られる都市部まで来るのはたいへんです。地方にいたら、なかなか手に入れられない。車いすも舗装されていないところでの移動はたいへんです。這って移動する人もいます。歩行できなくなることは、インドではインパクトが大きいことを勉強しました」
続いて、ロボットの話しです。「人間には500以上の筋肉があります。意識的に動かす骨格筋です。それを同時に動か人間というのはすごい。それを真似るのです。足だけで100以上の筋肉があり、それを同時に動かすのはたいへんです。僕が研究しているのは、歩行に特化して、主要な筋肉がどう動いているかを知ることです。人間は効率の良い歩行をするし、長時間歩くことができます。サイバスロンという競技会がスイスでありました。日常生活にちかいものを障害物競走のような形で競います。6競技あります。電気刺激で筋肉を刺激して自転車をこがせるとか。障がい者しか参加できない競技で、障がい者と技術者の競技です。義足で椅子に立ったり、座ったりすることはけっこう難しい。義足ユーザーの多くは腰や背中に痛みを抱えると言われています。椅子から立ち上がるときに義足で立ち上がれるようにする。そうすると、ひざが能動的に動く必要があるのです。階段を上り下りするのもたいへんです。それらをできるようにすることを目指しています」
 さらに、サイボーグの活動を語りました。「アスリート中心で、周りが支えるチームをつくろうとしています。コーチは為末大さん(元陸上ハードル選手)や順天堂大学陸上部出身者です。あとはエンジニアです。義足の選手の走り方は健常者と違いがない。ただ、足首が動かないので、足首を使って最後の一蹴りを利用して足を前に持ってくることができない。それは筋肉で何とかなると為末さんは言います。義足は重心を蹴るだけのものにして、選手に筋力をつけてもらうことにしています。競技者、コーチ、エンジニアの目線が組み合わさって、義足をつくっています。2016年にトップアスリート用義足『Xiborg Genesis』が商品化されました。佐藤圭太選手がリオパラリンピックでこれを使って100m走に出ました。国産義足がリオで使われたのは他にないそうです。問い合わせがたくさんきました」
ここで、元村さんは「陸王みたいですね」。「陸王」は池井戸潤さんの小説で、TBSドラマが人気になりました。遠藤さんは「陸王は見ていないのですよ。見ます」。
 一緒に義足をつくりたいと思っているジャリッド・ウォレスというアメリカの選手と昨年5月、契約しました。昨年の世界パラ陸上で200m走金メダルを取りました。リレーでは、佐藤圭太選手がメダルを取りました。我々は選手4人しかいませんが、ロンドンのパラでは、義足を使った選手の数は(世界的メーカーの)オズールが7人、サイボーグ3人です。地道に実績を積み上げて、少数精鋭でよいものをつくるという思いでやってきた結果、こういう現状になっています」
 サイボーグは昨年10月、東京都江東区豊洲のランニングスタジアムに「ギソク図書館」を設立したことでニュースになりました。「トップアスリートの義足をつくっていましたが、子どもの義足がないと言われて、何もできなかったことがショックでした。ここに来れば誰でも走れるようにと思いました。走るというのはしきいの低いスポーツです。それができないのは、義足が高いとか、走る場所がないとか、そういった理由です。しきいを低くする、図書館のように借りて走って帰る場所ができないかと思い、クラウドファンディングをしました」
 「SHIBUYA CITY GAMES」も話題になりました。「世界最速への挑戦」を掲げ、渋谷の道路を交通規制して、60m 3レーンを設けました。「本気の走りを見てもらおう」と、世界記録保持者のリチャード・ブラン選手を含む高いレベルの3選手のレースをしました。「心理的なバリアがあって、マイル走で人類は4分を切れないと言われました。一人の選手が4分を切ったら、1年以内に23人が4分を切った。10秒の壁というのも破られた途端、たがが外れました。義足を気にすることはなく、本気で壁を打ち破るレースにしたいと思いました。沿道に多くの人がいて、反響は大きかったです。昨年から、我々はオリンピック、パラリンピックのために何かするというのはやめています。義足の人が速く走ることによる価値観の変革が面白い。渋谷のレースを毎年開催して、世界記録を塗り替えたいと思っています」
 元村さんは「クラウドファンディングで、1750万円達成ということですね。どうやって集まったのですか」と質問しました。遠藤さんは「クラウドファンディングはその人に投資するという意味合いがあります。僕はいいということではなく、僕を応援してくれる人を応援している人が多いということでしょう」。義足1本で50~60万円かかり、30本で1800万円を要したということです。「子どもたちはすごい喜んでくれます」
毎日新聞3月30日朝刊に遠藤さんを紹介する記事が掲載される予定です。遠藤さんは最後に、「ものづくりをしながら、自分たちができる範囲で社会を変えるアクションをするというのが僕たちの活動内容です」と締めくくりました。
 続いて、元村さんと遠藤さんとのやり取りがありました。
元村さん:エンジニアは社会とかかわりを持たない人が多いように感じますが、遠藤さんの原動力は?
遠藤さん:自分の後輩とか顔が見えている人のためにつくりたい。原動力は最初の1人です。最初の1人が歩けるとか、速く走れるものをつくるというのがうれしい。
元村さん:元々はロボット少年ということですが、ロボットと義足とのつながりは?
遠藤さん:ロボット義足は全くロボットで、基本設計、プログラミングなどロボット研究者と同じことをしています。究極の動く物体は人間です。人工物ではつくれない。人間は手の届かない存在であり、人間の体には興味があります。人間はあこがれです。
元村さん:2020年は何をしていたいですか?
遠藤さん:サイボーグを最初から助けてくれた人、これから助けてくれる人と一緒にパラリンピック100m走を見たいです。
 この後、会場からの質問に答えました。経済的基盤についての質問には、「投資したいという話がいくつかありましたが、受けませんでした。経営判断の自由度を残したいからです。東京都から強化費による支援が得られ、潤沢ではないが、自由度のきく状況です。僕はベンチャーの社長は向いていないと感じます。接待を受けることが苦痛で仕方がない。為末さんからやりたいことをやっていればいいと言われ、楽になりました」と答えました。ギソク図書館の運営については、「サイボーグではなく、NPOを設立して運営しようと思っています。メディア露出が多く、寄付も集まっています。利用料を取っているので、最低限回すことができると思っています」と話しました。また、どんな義足をつくりたいかについては、「人間の歩行に求められるのは効率の良さです。一方、僕は見た目を重視します。左右非対称で歩くのは目立ちます。理想は目立たない義足だと思います。歩いている人が義足であることが分からない義足を目指したい」と夢を語りました。最後に、元村さんの「サイボーグを応援したい場合はどうすればよいですか」の問いに、「選手を応援してほしい。ものをつくっているときは放っておいてほしい(笑い)。競技場での観客が少ないのが現状です。小学生と話すと選手を応援してくれます。選手は人間的に優れていて、がんばっています。競技場に来て、選手と会ってほしい。いまなら、会いに行けるトップアスリートです(笑い)」と答えました。

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