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元村有希子のサイエンスカフェ「脳の発生から見た自閉症」

開催日:2月23日(金)18:30~20:00 イベントのカテゴリー:定期イベント

元村有希子のScience café「脳の発生から見た自閉症」が2月23日、毎日メディアカフェで開催されました。
 元村有希子・毎日新聞科学環境部長が専門家に科学の話題を聞く人気の連続企画。今回のゲストは、脳の発生をわかりやすく解説した『脳の誕生』(ちくま新書)、『脳からみた自閉症』(ブルーバックス)の著者、大隅典子・東北大大学院医学系研究科教授です。人体最大の臓器・脳。脳は呼吸や体温調節などの生命維持から、高度な思考までつかさどっています。たった1個の細胞からなる受精卵が分裂し、脳ができていくプロセスは、神秘に満ちています。その過程で生じる「不具合」が、自閉症や発達障害につながっていることも、最近の研究で分かってきました。脳研究の最前線を知るサイエンスカフェです。
 元村さんは「サイエンスカフェでは初めての女性ゲストで、仙台から来ていただきました。10年以上のお付き合いです。記者と研究者として出会いましたが、科学分野に女性を増やそうというイベントでご一緒したりしました」と大隅さんを紹介しました。
 大隅さんはゴーギャンの絵画「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」を映し、「どうしてこの絵が好きかと言いますと、時間軸に沿って変化していく現象に興味があるからです。発生と進化を理解したいと思って研究しています」と前置きして、「脳の発生からみた自閉症」のタイトルで話しました。「はじめに脳の話をします。メッセージとしては、脳の発生、発達が複雑なプロセスで、ちょっとした間違いが起こることは当然です。そのほころびが自閉症などの病気につながるということ、脳がいかに精緻なシステムであるのかを伝えたいと思います」
 大隅さんはまず、脳の発生発達で大事な四つのイベントとして、「神経誘導:神経組織の元がつくられる」「領域化:神経管が区画化される」「神経新生:神経細胞(ニューロン)やグリア細胞が生み出される」「回路形成:軸索が伸張し、正しい相手とシナプスを形成、必要に応じて刈り込みもする」—があると説明しました。
 神経誘導とは何か。「背骨の中には神経が入っています。骨ができるよりも先に神経管という管ができて、その周りに骨が形成されます。脳はゆっくりつくられていく。誕生の時点でも完成していません。神経管には番地が付いていて、どんな神経細胞が配置されるかが決まります」。神経細胞はどう生まれるのでしょうか。「神経管の内側には幹細胞がびっしり並んでいます。神経幹細胞というタネの細胞。幹細胞というと、IPS細胞が有名ですが、幹細胞のごくごく一つです。神経幹細胞は一生涯働いて神経細胞を生み出しています。神経幹細胞は分裂します。片方は同じ幹細胞として残り、もう一方は神経細胞になります。非対称な分裂であることが特徴です。このため、幹細胞がなくならないのです。大人の脳にも幹細胞があります。大人になると減るのは確かですが、脳の特別な部分では新たに生まれています」
 神経細胞のネットワークはどのように形成されるのでしょうか。「ケーブル状の突起が伸びていきます。正しい相手と結合しなければならない。突起の先端はセンサーになっています。反発因子が出ているエリアは避けます。誘因因子があるほうに行きます。そうして神経回路が形成されます。神経細胞1個のシナプスは数千もあります。形成がどうできるかは脳にとって重要です。2歳ぐらいまではシナプスをつくる動きが盛んです。よく使う神経回路とあまり必要ないものが取捨選択されて、刈り込む段階になります。たくさんあったほうが、機能が良さそうにみえますが、多すぎると混線が起こるかもしれない。取捨選択されなければなりません。成熟すると、刈り込みにより、神経細胞の層は薄くなります。『三つ子の魂百まで』と言われるように3歳児神話がありますが、脳は実はどんどん変化します」
 続いて、自閉スペクトラム症(自閉症)に移りました。自閉症のコア症状は「DSMS」と呼ばれる、社会性の異常、コミュニケーション異常、限定的な興味、常同行動(積み木で並べるときに横に並べることしかしないなど)で、3歳までに症状が現れます。「コア症状だけの人はいなくて、多様な合併症状があります。合併症状は、不安、精神遅滞、てんかん、感覚過敏・鈍麻、軽微な運動失調、多動、注意障害、消化器症状などです。一人ひとりで症状の組み合わせは異なります。いろいろな症状が合併しているものを一つの病気として研究するのは困難さがあります。自閉症発生の頻度は68~140人に1人、男女は4対1で、男児が多いですが、女児の方が重篤になりやすい。遺伝一致率は報告によって違いますが、60~90%です」
 自閉症発生に関連する可能性のある遺伝子は、米サイモンズ財団のデータベースに900近い候補遺伝子がリストされているそうです。その一つは「PAX6」という脳の発生の鍵因子です。「動物実験での検証ということで、PAX6変異ラットでの研究で、論文も出しました。それが2010年。研究室は翌年の東日本大震災で大きな被害を受けました。動物棟は大丈夫でしたが、2カ月は研究室が正常に機能しなかった。おかげで、何を研究するかを考える時間が増えましたが」
大隅さんはネットなどで根強く残る「自閉症のワクチン原因説」について、厳しく批判しました。「自閉症の環境要因には、ワクチンはないということは理解してほしいと思います。ワクチンが自閉症を誘発するという英研究者の論文がありました。データの捏造が発覚して、論文は撤回されましたが、今もネットに残っています。完全に否定されていることを知っておいてください」
 震災後、新たな研究に入ります。「自閉症が増えていると言われます。それはなぜか。診断がつくようになったのは1980年代ですから、それ以降、当然増える分が4分の1。4分の1は自閉症という病気があるこが知られたことで増えた。残り2分の1は分かりません。検証実験ができるのは両親の年齢ですということで、研究を始めました」
 母親の年齢による影響の研究論文はすでに出ています。大隅さんが取り組んだのは、父の加齢との関係です。マウスの実験で、父加齢により仔マウスの行動異常が生じるという結果が出ました。祖父加齢の影響は父が若齢であれば孫マウスには現れないことも分かりました。両方加齢している場合は現在、研究中だそうです。
 最後に、大隅さんは「自閉症の研究が、特異な才能の理解にもつながるといいと思っています。予防や症状の軽減にもつなげたい。葉酸サプリメント投与によりリスクを軽減できるという論文が出ています。一人ひとりが生かされる社会につながってほしいと思って研究しています」と話しました。
 この後、参加者との質疑応答が活発に繰り広げられました。「右脳と左脳の違い」については、「脳の1割しか働いていないと言われたりしますが、それは言い過ぎです。本を読んでいるときと絵を見ているときの比較をする場合、両方活動しているところは差し引いてデータにされます。1割しか働いていないのではありません。右脳は直感、左脳は論理的と言われますが、かなり眉につばという話かなと思います」と答えました。自閉症の親は自責の念が強いということについては、「脳細胞のほとんどは出生前にできています。親がどうにかしようとしても難しい。うまく刈り込みができないことが原因だとしたら、どのように介入したら改善できるのかは、心理学の先生が研究しています。何か行動したときにすごくほめるなど、より大きな刺激を与えてドーパミンが出るようにするといった試みがなされています。ご両親に責任がないというのは、どの遺伝子がどうなるかはコントロールできないからです」と述べました。男女比については、「女の子のほうがコミュニケーション力が高い。同じ基準で診断すると、女の子の方がクリアするため、男児が多いということになるかもしれません」と説明しました。大人の自閉症については、「大人になって診断される方もいます。就職して大きなストレスにさらされて、コミュニケーションが苦手だと思って受診したら、自閉症だと診断されるということがあります。そういう方でも、 1人で仕事できるところで仕事をする、不安を和らげる薬を使うといった、工夫ができるのではないかと思います」と語りました。


 


大隅さんのブログ 大隅典子の仙台通信
https://nosumi.exblog.jp/

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毎日新聞東京本社1階にある「MOTTAINAI STATION」を毎日メディアカフェとして午前11時から午後6時(イベント開催日は午後8時30分)まで開放しています。新聞や雑誌を読んだり、タブレット端末で毎日新聞ニュースサイトや毎日スポニチTAP-Iなどを検索したりできます。イベントは全て無料で参加できます(予約制、申し込み順)。

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